また、朴前政権が政財界を巡る一大スキャンダルを理由に退陣に追い込まれたため、文政権の経済政策は財閥系を中心とする大企業と距離を置く一方、政権の誕生を後押しした若年層を中心とする雇用創出を柱に据える姿勢を示した。

 韓国では少数の大企業が経済を牛耳るなかで、近年は財閥企業と中小・零細企業との格差が拡大しており、若年層は『大企業志向』を強めることで雇用環境の膠着化を招いてきた。

働き方改革が雇用環境を悪化させた

 こうしたことから、文政権は労働者の待遇改善と労働の質向上を目指す『所得主導成長論』を掲げ、補助金などを通じて公的部門を中心に雇用拡大を図る取り組みを進めたほか、最低賃金の大幅引き上げや『韓国版働き方改革』による労働時間制限を通じ、労働時間の削減やワークシェアリングによる雇用機会の創出を図るなど、『社会実験』とも呼べる政策運営を行っている。

 なお、文政権は一連の政策実行に当たり経済界との対話に消極的であり、結果的に政府と経済界との間の溝が広がる事態が続いている。

 外需に対する不透明感が高まるなか、最低賃金の大幅引き上げなどに伴う労働コストの上昇を受けて、企業は雇用拡大に及び腰となるなど、雇用を取り巻く環境は厳しさを増している。なお、直近の失業率は3.8%と低水準であるが、文政権の誕生を後押しした10代及び20代といった若年層に限れば、失業率は依然9%を上回る高水準で推移しており、充分な成果を挙げられていない。

 こうしたなか、経済界は政府に対して『韓国版働き方改革』の弾力的運用を求める動きを強める一方、労働組合は政府の取り組みが中途半端であるとして反発を強めるなど、文政権は『板ばさみ』状態となっている。