改革開放のシンボル民営企業も八方ふさがり

 中央政府は今、民営企業の救済と金融破綻の回避に必死だ。中国では企業の倒産が増えている。

 中国の改革開放のシンボルとしての役割を背負った民営企業。その数は2017年末までに2726万社に増えた。これに「個体戸」と呼ばれる自営業を加えると、実に中国企業の95%が私企業で成り立っている計算になる。しかしこれら民営企業の多くは、経営コスト増、資金調達難、構造転換の困難という三重苦で経営難に直面している。

 筆者は中国で、ある民営企業経営者と面会した。中国の民営企業トップ500の上位にランキングする、中国では有名なアパレル企業の経営陣である。

 仮に彼を陳氏と呼ぶことにしよう。陳氏一族は浙江省温州市で、それぞれ工程ごとに独立したグループ会社を経営する同族企業だ。1970年代生まれの陳氏は、製造販売に従事し、全国チェーンを発展させた。そのブランド名は中国人なら誰もが知るところだが、中国の経営環境に対する陳氏の見通しは悲観的だ。

「生存競争があまりに激しい。中国では今、年商1億元規模の企業がバタバタと倒産しています。その原因の1つは、一瞬で価格の比較ができるネット販売。消費者は同じものなら少しでも安いものを選ぶため、競争力のない多くのアパレル工場がつぶれてしまったのです」

 同社製品は「タオバオ」でも販売し、大きな商機につながったという。しかし、同時にこれがデフレを招き、2005年前後に高額衣料品の値段はどんどん落ちていった。

 一方で、陳氏は経営環境を悲観するもう1つの要因を「信用破綻」だと指摘する。

地下鉄に掲げられる企業信用調査サービスの広告。「パートナーは夜逃げした、プロジェクトはつぶれた、生活を失った。その前に『天眼査(サービス名)』を!」とある(2018年撮影)地下鉄に掲げられる企業信用調査サービスの広告。「パートナーは夜逃げした、プロジェクトはつぶれた、生活を失った。その前に『天眼査(サービス名)』を!」とある(2018年撮影) Photo by K. H.

「温州ではもともと『民間借貸』(個人や企業間での融資)が発達しており、銀行からの借り入れなしに独自に資金調達ができましたが、これが2011年に破綻してしまったのです」

 この信用破綻は連鎖を呼び、陳氏のビジネスも一気に暗転した。自社ブランドを持ち、店舗展開を一気に加速させようとした矢先、店舗開発は行き詰まり、数億円の資金を投じて大量生産した商品は瞬く間に在庫の山と化した。その痛手は8年を経た現在も癒えてはいないという。その理由を陳氏は次のように語っている。

「2011年までは中央政府も『民間借貸』を認めていました。商業銀行が中小の民営企業に貸したがらない環境の中で、『民間借貸』は唯一の血流だったのです。けれども2011年に不動産バブルが崩壊すると、住宅を担保に高利で借り入れていた経営者はもはや夜逃げするしかありませんでした」

「この破綻の元凶を『民間借貸』にあるとした中央政府は、その後の金融改革の中で、『民間貸借』を規制し、銀行融資を奨励するようになりました。しかし表向きの政策とは違い、銀行は貸したがらない。結局、資金が行き渡らず、多くの企業が今なお厳しい状況に置かれているのです」