「報酬」はゴーン氏が記録していた概念上のものであり、日産からの報酬額が国際的な自動車メーカーの標準に沿っていれば得ていたかもしれない額のことだ。同氏の報酬がそうした水準より少ないことは誰もが知っていたし、フォードやゼネラル・モーターズ(GM)はゴーン氏を日産から引き抜こうとしていた。

 だがゴーン氏によると、開示されていない確定額の報酬について「法的な効力のある契約」を日産と締結したことはない。ゴーン氏は、退任後の報酬に関する提案書のドラフトは「社内外の」弁護士のチェックを受けており、やはり契約を交わしていないとしている。報酬ではなく契約もしていない金額について開示しなかったのがなぜ犯罪なのか、検察の説明を聞くのが楽しみだ。

 ゴーン氏は別の2つの容疑についても説得力のある陳述をした。まず日産の最高経営責任者(CEO)時代に、ドル円相場の変動対策として結んでいた為替スワップ契約の担保を日産がカバーした件。ゴーン氏は報酬を円で受け取っていたが、日本国外でドル建ての費用があった。契約の主体は後にゴーン氏に戻り、日産に損失はなかった。

 検察はまた、ゴーン氏が長年の日産のパートナーであるハリド・ジュファリ氏に対して日産から支払わせたのは、ゴーン氏個人への仕事の対価だったとしている。だがジュファリ氏もゴーン氏も、支払いは「日産に対して極めて重要な業務を推進」したことに対する適切なものだと話している。

 勾留取り消し請求に対する判断は週内に下される見通しだが、勾留を延長するために検察が新たな容疑を持ち出すことも考えられる。検察は逃亡や証拠隠滅の恐れがあると言うが、これまでに十分な証拠が見つかっていないのなら何を隠滅するというのか。

 長期の勾留を受け、ルノーに対してゴーン氏の会長職を解くよう求める圧力が強まっている。同氏がまとめたルノーと日産および三菱自動車のアライアンスに対しては日本側の不満が高まっており、ゴーン氏の取り調べはアライアンス解消を目指す日本側の動きの一環だとの憶測も無理はない。フランス側はゴーン氏の日本での処遇についてことさら騒ぎ立ててはいない。ゴーン氏がフランス自動車業界を救うためにしたことよりも、アライアンスの方が気にかかるようだ。

 いずれも私たちにとっては、法廷ではなく役員室で扱うべき問題のように思える。この間もゴーン氏は拘置所で、「赤の女王」による裁きにどう対応するか考えることができる。

(The Wall Street Journal)