このデータからは「残業を捨て街に出たい」という思いが伝わってくる。働き方改革に様々な提言をしているAPU学長・出口治明氏は、良いアイデアは「人、本、旅から生まれる」と語っているそうだ。つまり、余暇を使って外部から学んだものから良い成果が生まれる、というのである。残業武勇伝を語る人々は、この変化に気づいているだろうか。

平成の不良債権(=長時間労働)の是正は
個人の問題ではない

 このように本書は、2万2000人規模の調査による圧倒的なデータから、これまで見えなかった「残業の現実」を浮き彫りしている。その志あふれる仕事には心から敬意と感謝を表したい。平成の不良債権(=長時間労働)の是正に本腰を据えて取り組みたい方には、まさに最良の一冊だ。本書の「はじめに」で著者はこう書いている。

“長時間労働の是正という「とてつもない難問」を、「私の残業論」という「個人の経験談」だけで解決しようとする書籍があとを絶ちません。本書を通読すればおわかりいただけると思いますが、長時間労働は構造的に生まれているものであり、こうした付け焼刃的な方法では、決して問題を解決することはできません。これに対して本書は、前述の通り大規模調査に基づいたデータやエビデンスによって構成されています。”

 そうなのだ。一口に長時間労働の是正といっても「とてつもない難問」なのである。私もそれに取り組む一人として、その複雑さ・困難さに茫然としてしまう。社員一人一人の理解度が違うなか、なぜ今、取り組む必要があるのか共通理解を作ることから始めなければならない。同居する実母を介護している私には、少しは、その意義が理解できる。