こうした観点で捉えれば、回り道のように見えるクラウドファンディングの活用は、世の中の人がどのような新事業や新商品に目を向けるのかを社内に知らしめ、既存の組織の事業そのものを活性化させる役割も担っているのかもしれない。

「VAIO」のその後とは対照的
「Xperia」はなぜ残念なのか

 現在のソニーは、好調の金融・ゲームビジネスだけでなく、ソニーショック以降不振が続いてきたテレビを筆頭とするエレクトロニクス事業も業績が回復し、全社的に良い傾向が続いている。ただ、唯一残念なのが「Xperia」スマートフォンを中心としたモバイル事業である。

 かつてエリクソンとの合弁事業時代にXperiaを世界中で販売し、世界で戦える日本唯一のスマホメーカーであったソニーだが、今日では国内メーカーの後塵を拝しているくらいに状況が悪化している。ソニーのモバイル事業悪化は、中国での低価格端末の無理な拡販によって収益性が悪化したことに端を発している。

 これは、実はソニーにとって初めての経験ではない。かつてソニーの一事業であったPCの「VAIO」も、中国で低価格モデルの拡販戦略に失敗して海外事業から撤退、事業そのものを売却した。現在は、ブランドと開発組織を引き継いだVAIO株式会社が国内事業から堅実に建て直し、経営も好調で、再び海外市場に進出しようとしている。

 ソニーのモバイル事業も海外事業を縮小し、国内中心にしたところまではVAIOが辿った道と似ている。しかし、国内でのビジネスの仕方がVAIOとXperiaでは大きく異なっている。VAIOは小さな日本のPCメーカーとして、規模は小さいながらユニークな商品を出すことで根強いファン層を構築し、経営を安定させてきた。

 一方、ソニーのモバイル事業は、国内では自社が直接商品を販売する形態をとらず、ドコモなどの通信キャリアが直接の顧客となっている。そのせいなのか、最近のXperiaの商品の特徴や仕様は、他社の後追いが続いている。

 決して悪い商品ではない。おそらく開発力は一流なのだろう。使ってみて機能・性能を比較してみれば、他社より優れている点がいくつもある。しかし、そこには新しい発想が見受けられず、むしろ他社がやっていることを後追いで実現しているものが多い。