「俺、半分日本、半分上海に住んでるよ。今度、遊びに来て。料理作るよ」

 興味を引かれた筆者は、早速、遊びに行くことにした。

億ションのベランダには
魚や野菜が干されていた

 上野からほど近い、山手線の駅から数分のところに建つ豪華なマンションの1室。いわゆる“億ション”の部屋はソファとテーブルのみで、部屋の中は閑散としていた。冷蔵庫から北海道産のバフンウニとビールを取り出しながら、丁は言った。

自宅で料理する丁さん自宅で料理する丁さん Photo by N.N.

「このマンションは3年前に買った。投資じゃないよ。住むため。1年の半分は女房と来日して東京と沖縄で生活してるの。沖縄にも5年前にマンション買ったよ」

 ベランダにはタチウオが干され、見たこともない中国の野菜などが並んでいた。日本にいるときも上海にいるときも、昼間から大量の料理を作り、人を招いてふるまうのが日課だという。

 仕事はどうしているのか。

 「ほとんどしていない。せいぜい微信(WeChat)で幹部に指示したり、報告を受けたりする程度。オフィスにも行かない。もうカネ儲け、疲れたよ。戦争だったよ。もう十分稼いだから、今はとにかく毎日リラックスして暮らしたい。野菜作って、市場で食べたい魚を探して、自分でさばいて、仲間と一緒に食べて飲んで、田舎をぶらぶら歩いて。そんな生活がずっとしたくて、今その夢がやっとかなった。のんびり遊んで暮らしてる。すごく幸せ。心が穏やか。昔の俺は鬼みたいな顔してたよ。人間じゃなかった」

 テーブルに並べられた色とりどりの手料理をつまみ、最高級のマオタイ酒を飲みながら、丁にさまざまな話を聞いた。

 中国での暮らし、事業のヒストリー、人生観、お金についてなどなど。丁は時に激しく、時に笑いながら、またあるときは涙ながらに、大いに語ってくれた。