誰かに電話しながら、懸命に国際電話のかけ方を教えてもらっていたのだ。会社は何を教えているのか、なぜこんな人を海外出張に出したのか、そして本人の意識の低さにも言葉を失ってしまった。

社員表彰や抽選会
歌や踊りが披露される

 上海浦東空港を出た私たち一行は、すぐに迎えに来た車に乗り込んで南通に移動した。南通には、28年前に私も一緒になって設立したIT企業が数年前に買収し、子会社にした企業がある。その企業の年会に出席するために、日本の大手企業の関係者らと南通を訪れたのだ。

 年会のスタイルは、どこも似通っている。豪勢な食事が並ぶホテルの会場を借り、社員表彰や豪華賞品の抽選会を始め、社員たちによる歌や踊りなどが次々と披露される。その中でも、会場の雰囲気を一気に盛り上げたのは、携帯電話の中国版SNS「微信(WeChat)」を使った「紅包」争奪戦だ。

 紅包とは本来、小さめの赤い封筒に入れて渡す「寸志」のことをいう。それが今では、携帯電話を使って電子マネーを渡す形に姿を変えた。例えば、年会に100人が出ているとすると、WeChatの「紅包」に500元を分けて入れ、20人にランダムに配る。その中身はバラバラなので、一種の運試しにもなるといった具合だ。もちろん、8.88元など縁起のよい金額を決めて配る方法もある。

 社員の平均年齢が20代で活気ある会社の年会を見て、日本大手企業の日本人幹部は思わず嘆いた。「今や、日本ではこうした活気があまり見られなくなった。うらやましい」。

 抽選会で用意された賞品は、電気炊飯器やダイソンのドライヤー、ジューサー、コーヒーメーカーといった家電製品から、シーツなどの日用品に至るまでさまざまだった。

 その中で私は、「特等賞」のプレゼンターを務めた。賞品は、小米(シャオミ)のノートパソコンと、その他のものを組み合わせたもので、日本円にして8万円ぐらい。だが、すぐに中国最大の弁護士事務所に勤める友人から、WeChatで突っ込まれた。