「いったい、どうやって自分の苦しみを証明すればいいのか」と法廷で不満を訴えた引きこもりの青年。2年前、こども園をナイフで襲撃した彼の心中とは(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「引きこもり」男性が裁判で控訴
苦しみを証明することの難しさ

 2月5日、懲役4年の実刑判決を言い渡された大分県宇佐市で引きこもり状態にあった男性が、本人の強い意向により福岡高裁に控訴した。

「地域がすべて敵だったら、どうやって自分の苦しみを証明すればいいんですか……」
 
 1月22日、大分地裁中津支部で、射場健太被告(34歳)は、聞き取りにくい声ながら、判決を言い渡した沢井真一裁判長に、そう不満を訴えていた。

 射場被告は2017年3月、同市の自宅に隣接するこども園を襲撃し、小学生や職員ら4人を竹刀とナイフで負傷させた。

 しかし、被告は小学生のときにいじめを受けたのをきっかけに、約15年にわたって引きこもり状態にあり、近隣の自動車音や話し声が騒音のように聞こえる「聴覚過敏」に悩まされていた。

 しかも、検察側の鑑定留置により、初めて被告が「広汎性発達障害」の一種で「自閉症スペクトラム症候群」に含まれる「アスペルガー症候群」だったことも、公判で明らかになった。

 自閉症スペクトラムとは、生まれつき脳の一部機能に障害がある「発達障害」の中でも、相互的な対人関係の障害、コミュニケーションの障害、興味や行動の偏り(こだわり)の3つの特徴が現れるとされている。また、広汎性発達障害のかなりの割合の人に「視覚」「聴覚」「味覚」「触覚」などの感覚に対し、特定の刺激に苦痛を感じる「感覚過敏」という症状が見られるという報告もある。

 検察側の冒頭陳述によれば、被告は小学生の頃からいじめを受け、高校に進学したが、入学後にまもなく対人関係に苦痛を覚えて不登校になり、中退。以来、自宅に引きこもるようになった。引きこもる中で、痛い思いをせずに死にたいと考えるようになり、いじめの加害者らに復讐したいと考えるようになった。