人口減少が本格化する今、企業間での顧客の奪い合いは激化していく。経営者は変化に対応すべく、あらゆる経営手法を見直す必要に迫られることだろう。しかし、経営の方向転換にはリスクが伴う。リスク軽減のためにも、他社の失敗事例を学ぶことはますます重要となるだろう。

 あとから客観的に見れば、いずれの倒産の理由も明白に見えるかもしれない。しかし、自分が渦中にいるときに、本当に冷静な判断ができるだろうか。企業の経営に関わる方には、自社の状況を振り返りながら本書を熟読することをおすすめしたい。(池田明季哉)

本書の要点

(1)他社の成功事例をそのまま自社に当てはめても、同じように成功するとは限らない。再現性の高い失敗の定石を学ぶことによって、自社の経営に役立てることが重要だ。
(2)倒産を迎えた企業には、経営状況の把握やリスク対策の甘さ、変化への対応力の低さといった共通のパターンが見られる。
(3)企業の明暗を分けるのは、変化に対応するスピード感のわずかな差だといえる。

要約本文

【必読ポイント!】
◆ 急成長には落とし穴がある
◇脚光を浴びるも内実が伴わない

 優れた業態を生み出しても、内実が伴わなければ経営不振に陥る。この事実を教えてくれるのが、遠藤商事・ホールディングスだ。

 同社は2011年、東京・吉祥寺に客単価3000円程度のイタリア料理店をオープンさせた。これを皮切りに、多店舗化を始めた。「マルゲリータ1枚350円」を打ち出して、東京・渋谷に出したFC1号店には女性客が殺到。他社と共同で「ナポリス」100店をめざすFC運営会社を設立する。誰でもピザがうまく焼けるという窯や生地伸ばし機をセットし、アルバイトでも1枚90秒で本格ピザが提供できる仕組みを構築。それが評価され、飲食業界を変える優れたベンチャー企業として表彰を受けるほどだった。

 しかし、急成長に伴い店舗拡大を急ぐあまり、人材育成が追いつかなくなった。社長は100店達成の夢を追うため、いったん出した店の撤退を嫌った。利益が出なくなったFC店オーナーが撤退を申し出ても、社員による支援を強化するなどして乗り切ろうとした。