同僚から聞いたのはiDeCoでした。掛け金の上限は毎月1万2000円までとなりますが、老後資金作りにはとてもいいし、所得税や住民税が安くなるので節税にもなると聞いたのです。

 Aさんは、もともと会社の「確定給付年金(DB)」という企業年金に加入していましたがが、教育費はまた別に貯めるとしても、「節税できるし、老後資金作りにはこれしかない!」と思ったそうです。そこで妻に相談することなく申し込み、2~3ヵ月後より月々1万円を掛けていくことにしました。

60歳までやめることができず
毎月赤字になることが確実に

 しかし、その月以降の妻の表情がすぐれません。理由は家計の赤字でした。

 そもそも家計は収支ぎりぎりの状態。貯蓄が増やせないことで悩んでいたのに、1万円をiDeCoに回してしまったことで、毎月1万円以上の赤字が確実になってしまったからでした。

 おまけに、iDeCoは、掛け金こそ5000円まで減額できますが、60歳までやめることはできません。つまり、支出はずっと続くのです。Aさんは、そんなことさえ知らずに始めてしまったのです。

 生活のことを心配した奥さんは、慌てて今後の収支について計算してみましたが、今のままではどうやっても貯蓄できません。ボーナスをためようにも、すでに大きな買い物をしていたためそれも難しい。Aさんの安易な考えで始めた投資が、家計に大きなダメージを与えることになり、夫婦そろって肩を落としていました。

「子どもはまだ小さいのですが、私が働きに出るほかないのでしょうか」

 家計相談に来たAさんの奥さんは、泣きそうな表情を浮かべて尋ねてきました。「落ち着いてください」となだめ、家計状況を聞いたところ、幸い支出が膨らんでいる部分が比較的多くありました。そこで、「無駄を削減していけば問題なく貯蓄できそうですよ」と答えたところ、少し安心したようで落ち着きを取り戻してくれました。