中央政府は、地域の個別の事情を把握しているわけではない。米国に守られ、食べさせてもらった「昭和の時代」のような、全国一律の高度成長などもはやありえない。単純に公共事業を行い、補助金を配ればいいという時代は去った(第202回)。地域ごとに、社会や市民生活の多様性が際立ってきている。個別のさまざまな事情など把握できないのだ。

 中央政府は、過去に自治体で成功した政策アイデアを集めて「事例集」にして、その中から選択した政策を実施する自治体にお金を配るしかなかった。自治体には「政策事例集」から何を選択するかを記載した「計画書」を作ることが求められた。言い換えれば、自治体が中央政府からお金をもらうためには、中央政府が作った政策事例集に基づいて計画を立てなければならないのだ。

 地方分権は、90年代の「政治改革の時代」から始まった。しかし、約30年近く経過した今、なにが起こっているだろうか。地方自治総合研究所の北海道チームの調査によれば、「国から各自治体へのコントロールは、概して強化されていると感じますか」という質問に対し、3分の2の市町村が『強化されている』と答えているのだという(今井照『地方消滅を加速する、霞ヶ関の「地方自治体いじめ」の構造を暴く』現代ビジネス)。

 要するに、地方分権の推進というのは「建前」でしかない。実際は、国の政策事例集に従わないと予算がもらえない。その結果、全国の地方自治体が横並びで同じ施策を実行することに拍車をかけ、そして責任は地方に降りかかってくるため、さらに補助金を投入しても地方は衰退するという状況が生まれているのだ。

 その代表的な事例が、地方創生の代表的政策とされる「プレミアム商品券事業」だ。プレミアム商品券とは、2014年度補正予算に、地域における消費喚起や、これに直接効果を有する生活支援を推進する事業として、予算に盛り込まれた事業だ。全国にある1788の自治体のうち、実に1750の自治体がこのプレミアム商品券事業を実施した。しかし、内閣府が取りまとめた事業報告書には、「商品券があったから買い物をした」という、「消費の先食い」以上の効果が曖昧であったことが記されていた。

 なぜ、プレミアム商品券事業の効果が曖昧に終わったかというと、全国一律での実行だったからに他ならない。特別な観光地や特産品を有する地域は少ない。多くの自治体は、商品券による売り上げを伸ばすために、「値下げ競争」を行うしかなかった。結局、売れば売るほど赤字になり、多くの自治体で経済が疲弊した。地方の衰退が進むだけに終わったのだ。

 地方創生の他の施策でも、同様の問題が見られる。中央主導の地方分権という「建前」によって、国が決めた政策事例集に従った自治体にお金をばらまくだけの「税金の無駄遣い」が広がっており、多くの自治体を逆に疲弊させている。