政府に対する製薬業界の警戒感も強い。安倍晋三政権は2016─18年にかけて、社会保障費の伸びを5000億円に抑える目標を掲げたが、3年間のうち薬価改定の年に当たる16年と18年は、抑制に必要な額の大半を薬価引き下げに頼った。

 一方で、医師の技術料を含む「診療報酬本体」は引き上げたことから、製薬業界からは不公平を訴える声も出た。それでも、製薬会社にとって「医師は顧客のようなもので、強く不満を言いにくい」(国内製薬大手)のが実情だ。

高額薬の定義

 厚労省の審議会は20日、スイス製薬大手ノバルティスの白血病治療薬「キムリア」の製造・販売を了承した。この治療法は、免疫反応の司令塔となるT細胞を患者の血液から取り出し、がん細胞を攻撃しやすくなるよう遺伝子を改変した上で体内に戻す「CAR─T細胞療法」と呼ばれる。

 米国では47万5000ドル(約5200万円)の価格が付いた。日本でも「それに近いものになるのではないか」(政府関係者)とみられ、価格への注目が集まっている。

 ただ、単価が高いものだけが「高額薬」とは言えない。安くても患者数が多ければ、財政への影響は大きくなるからだ。キムリアの対象患者は国内で250人程度とみられ、財政にかかる負担は限定的との見方もある。

 冒頭の後藤医師は「例えばインフルエンザの薬は、熱が1日早く下がるだけで、子どもや妊婦さんなどを除けば人の命を救うわけではない。費用対効果の話をする時に、単価の高い薬だけを対象にするのは矛盾しており、他の薬でも議論すべきだ」と指摘する。

(梅川崇)

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