運転手は社内でじっと座ってハンドルを握っているため、その過酷さたるや相当なもので、真夏にこそ、登山用や冬用の保温性が高く発熱作用のある機能性下着が欠かせないと笑っていた。

 このように、立場の弱い人にとって、健康を損ないかねない温度問題は重大事である。

温度支配権を乱用していると
「温度ハラスメント」の恐れも

 ところが時流といおうか、昨今の働き方改革の恩恵というべきか、幸いなことが起こっている。1つは職場がフリーアドレスになってきたことである。不快な温度のところに無理に座る必要はない。空調から遠いところなど、自分の好みのところに逃げられる。

 もう1つは、リモートワークである。自分にとって快適な温度の場所を選んで仕事をすることができる。座る場所を決められたオフィスで温度支配権をめぐる争いに明け暮れる必要もない。

 とはいえ、すべての会社がフリーアドレスでもリモートワークでもないから、問題が全面的に解決したわけではない。世界をリードする日本の空調機器メーカーに、誰もが快適に感じられる気温や湿度の管理ができるような、画期的な商品の開発を期待したいところだ。

 顧客のように簡単に離脱するわけにはいかないのが会社だから、空調メーカーが格段に進んだ空調のしくみを開発するまでは、少なくとも優位なポジションにある人は、温度支配権を乱用していないか気をつける必要があるだろう。来年度にはハラスメント防止法(仮称)の成立も見込まれているから、「温度ハラスメント」と言われないよう注意をしておきたいものだ。

 寒さに弱い私は、春になるのが待ち遠しい。あんなに店内が寒くなければ、件のラーメン店にもぜひもう一度行きたいと思っているのだが、飲食店の競争の激しい地域なので、春まで生き延びてくれるだろうかと少しばかり心配している。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山進、構成/ライター 奥田由意)