「顧客、われわれの場合、大手自動車メーカーですが、彼らの声を聞いて、その技術的な要望・要求を開発に正確に伝え、最低でも要望通り、できれば要望の上をいく製品を予算内で開発してもらう、いや何とかしてそうさせるという仕事ですね。こう言ってしまえば簡単ですが、実際はうまくいかないことだらけの仕事なんです」

 ものづくりの会社で最も重要な部署はどこかといえば、当然それはモノ自体を開発、製造、販売する部署ということになろうが、実際はそう単純な話ではない。いいモノを作るといっても、それが顧客にとっていいモノ、顧客が求めるモノでなければ意味がないし、業績にもつながらない。

顧客と自社のはざまで
絶えず大きなジレンマを抱える

横浜ゴム直需技術部内の直需技術1グループ樋口禎課長

 樋口が統率するグループは、まさにこの顧客にとってのいいモノを、顧客に張り付き、密にやり取りする中で探り、見いだし、飲みこみ、腹に落とした上で、自社の開発陣にその中身を的確に伝え、理解させ、実際に作らせるという、司令塔のような立場にある。

 ある意味、実際のものづくり以上に重要かつ難しいポジションかもしれない。顧客都合と自社都合の間に挟まれ、絶えず大きなジレンマを抱えながらの仕事だということが容易に想像できるだろう。樋口は言う。

「直接、製品の開発に携わるわけじゃないのですが、顧客の声を聞きながら、顧客と自社の開発陣の間に立って、開発のかじ取り、修正、牽引をしていくのがわれわれの役目。その場合、最も優先すべきはお客さんの要求、要望ですが、それだけをそのまま自社の開発陣に押しつけるだけではダメ。絶対に無理なことを、お客さんの要望だからとゴリ押ししたところで開発する人間たちがパンクしてしまったら意味がないからです」

 そして、こう続ける。

「だから技術部門とやり取りした上で、例えばお客さんの希望の納期ではとても無理だとわかったならば、今度はそれをきっちりお客さん側に伝え、新たな日程を提案して、納得してもらう必要がある。まあ、つらい役回りですよ(笑)。そういう意味で、お客さんと自社の板挟みになるのが宿命みたいな仕事ですね」