この周辺は、もともと17軒の集落だったが、現在は4軒まで減少。地域でのコミュニティを形成することが難しくなってきた。

 また、このあたりはスマートフォンがつながらない、またはつながりにくい地域でもある。そのため、山本さんは「スマホは(ガラケーも含めて)持っていませんよ」という。そんな話をしていると、リビングのほうから、懐かしい有線電話の呼び出し音が鳴った。

「さくぎニコニコ便」では、マツダと連携してスマホによる予約サービスアプリを配信しているのだが、山本さんは電話で乗車予約せざるを得ない状況だ。

 20分間ほどお話を伺った帰り際、「お元気で」とお声掛けすると、「またいつでも来てくださいね」と笑う、山本さん。

 山本さん宅からの帰路、田村さんは同乗する私とマツダ本社関係者に対して、改めて訴えた。

「この地域を存続させるために、クルマは絶対に必要です。クルマ社会から外れたら、この地域には住めなくなってしまう。私は来年70歳ですが、100歳になっても乗れるクルマをぜひ、マツダに開発してほしい」と胸の内を語った。

 2018年12月から2019年9月まで、マツダが行う新たなる試み。

JR三江線は2018年4月1日に廃線。閉鎖された駅の様子
JR三江線は2018年4月1日に廃線。閉鎖された駅の様子 Photo by Kenji Momota

 高度な運転支援システムと、マツダ独自開発の配車システムを搭載する最新型CX-5で行う、「支え合い交通サービス実証試験」。

 なぜ、マツダはいま、こうした動きを始めたのか?

 その目的はなにか?

 広島のマツダ本社で関係各位に詳しく聞いた。

(ジャーナリスト 桃田健史)

>>3月5日(火)公開予定の後編『マツダが地元広島で始めた「支え合い交通サービス実証試験」の真実』に続きます。