溶けるミサイル

 F35を活用する構想にとって課題となるのは、地理的条件だ。

 ワシントンの米有力シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)のミサイル防衛専門家トム・カラコ氏は、北朝鮮の発射するミサイルを待ち伏せする戦闘機は理論上、北朝鮮の領空を尊重する必要があると指摘する。

 だがそれだけの距離を保っていては、ミサイル発射地点から遠すぎて迎撃の効果を上げられないということになりかねない。

 弾道ミサイルを大気圏脱出前に撃墜するには、改良した空対空ミサイルでもスピードが遅すぎるだろう、とマサチューセッツ工科大(MIT)のミサイル防衛専門家セオドア・ポストル氏は言う。

 米防衛大手レイセオンなどが製造する空対空ミサイルでは、誘導に必要な大気密度が得られない高度に到達する前に弾道ミサイルを撃墜するための時間的余裕は、推定200秒しかない。F35が打ち上げを探知し、空対空ミサイルの照準を定め発射するまでに、約50─60秒が必要だということを考えると、撃墜するには、F35が弾道ミサイルに非常に接近している必要がある、とポストル氏は言う。

「発射場所のごく近くにいれば、撃墜は可能だ」と元ロケット科学者のポストル氏は言う。「だが、そこまで接近できる可能性は非常に低いだろう」

 はるかに高速で軽量の空対空ミサイルをF35に搭載したとしても、超高速で飛ばなければならない距離が長くなれば、空対空ミサイル自体が溶け始めてしまうだろう、とポストル氏は言葉を説明する。

 障害はあるものの、国防総省がこのような選択肢を検討しているという事実そのものが重要だ、とカラコ氏は言う。「これはもっと広範囲なカルチャーの転換を示している」