経常赤字の先に見える危険なシナリオ

 国内の貯蓄が減少して経常赤字に陥りかねないという状況は、単に国際収支上の問題にとどまらない。日本経済全体の状況が大きく変化しかねない危険をはらむ。

 立正大学の池尾和人・経済学部教授は「国内の貯蓄があるから、金融機関や日銀を通じて大量の国債が消化されている。財政の持続性への信頼が保てるか否かは、貯蓄がもつかどうか次第」だと解説する。

 そして「20年代に入れば、貯蓄が減少して様相が変わる。金利が上昇し始めたら、そこでどれだけ増税できるか、また歳出をカットできるか次第で、財政への信頼が失われることもある」と警告する。

 日本総研の湯元健治副理事長の試算によると、20年代の超高齢化社会では医療・介護といった社会保障費が膨張。その不足財源を全て消費税でカバーする場合、17%への消費税率引き上げが必要となる。

 それができなければ財政状況は一段と悪化し、日銀のテーパリングが始まる時期と相まって、長期金利の急上昇リスクが一段と現実化しかねないとみている。

 巨額の債務残高が積み上がっている日本において、金融市場で低金利が維持されている背景には、経常黒字の存在やその背後に存在する巨額の対外純資産の存在がある。

 また、8%と他の先進国と比べて低い消費税率の水準が、今後の引き上げ余地の大きさとして海外投資家の目に映り、財政改善期待が辛うじて残存しているということもある。

 しかし、自動運転、AI(人口知能)、ビッグデータを使ったビジネスモデルの転換、プラットフォーマーに代表される収益率の高いビジネスモデル構築など、最先端のビジネス現場で、日本企業は米国などに大幅に後れを取っている。

 ある民間エコノミストは「先端技術を駆使したビジネスが育たず、このまま高齢化を迎えると、持続的な財政運営が難しくなるだろう」と指摘。足元で国債現物が品薄になっている短期的な市場環境とは正反対の状況が、いずれやってくるリスクに警鐘を鳴らしている。

(中川泉 編集:田巻一彦)

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