一連のやり取りは単にソーシャルメディア(SNS)上での余興やゲームだとやり過ごすこともできる。だがこれは野党・民主党内で大統領選候補の指名をにらんで強まってきている基本的な議論を反映している面もあり、その点を軽視することはできない。

 具体的には左派を中心に提唱されている国民皆医療保険や温暖化対策の1つである「グリーン・ニューディール」の財源を、どうやって確保するかという問題だ。いずれも大統領選に向けた候補指名争いの主要な論点として浮上。早くもトランプ大統領からは民主党は「社会主義」を受け入れている証拠だと攻撃を浴びている。

 米国政府が抱える債務は22兆ドルに膨らみ、義務的経費や利払いなどで慢性的な財政赤字が生まれている状況を踏まえ、あらゆる政治グループに属する経済学者と米連邦準備理事会(FRB)の専門家は、財政は既に持続不可能な経路をたどっているので、この先は慎重な運営が求められると警鐘を鳴らす。

 こうした中で、ケルトン氏の理論を用いれば、米国の債務や財政赤字の活用法、またFRBの果たす役割に関する見方はがらりと変わってくる。つまり民主党の大統領候補指名レースに参加している人々が論じているような政策の実現を後押ししてくれる。

 これほどの発想転換は、平時なら思いもよらないだろう。しかし2007-09年の金融危機から10年が経過し、サマーズ氏や国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミスト、オリビエ・ブランチャード氏らいわゆる主流派の経済学者ですら、政府の財政政策運営について再考を迫られている。

 なぜならFRBによる大規模な債券買い入れや大型減税を実施しているのに物価や金利が跳ね上がらない局面では、もっと借金をして生産的な公共事業に投資しても安心だろう、という意見が一般的になってきたからだ。

 オバマ前政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたジェーソン・ファーマン氏は5日、前政権は野心的な公共事業を策定したものの、それでも政府債務の対国内総生産(GDP)比を一定に保つか、下げるのが得策だと考えていた。ところが今では多くの人から、なぜ対GDP比を低くしなければならないか質問を受け、比率を抑えるべきだという経済的な確信が揺らいできたという。