社会の至る所で男女平等は改善を見せているとはいえ、けっして十分とは言えないのが現状である。さまざまな場面で見られるジェンダーバイアスによって、女性たちは自分の能力を過小評価したり、過度に自信を失ったりしてしまうのだ。この問題は特に、男性優位の分野で働く女性が陥りやすい。筆者は、そうした環境下にある女性たちが活きいきと働けるよう、学術的知見に基づくアドバイスを贈る。


 職場における男女平等について、組織は着実に改善しているものの、そのペースはあまりに遅い。

「女性躍進の年」と呼ばれた1992年から26年を経た2018年、歴史的ともいえる102人の女性下院議員が米国に誕生した。それでも、下院における女性議員の割合は、いまだ4分の1にも満たないのが現状だ。

 昨年、米トップ企業で取締役に任命された女性の数は、248名という記録的人数に達したが、それでもなお、新たに任命された取締役合計のわずか31%を占めるにとどまっている。

 そして、ドナ・ストリックランドは女性として55年ぶりにノーベル物理学賞を受賞したが(女性として3人目の受賞)、いまだに女性は、多くの理工系分野において著しく影の薄い存在であり、職場ではジェンダー差別にしばしば直面する

 言い換えれば、改善しているとはいえ男女平等には程遠い、ということだ。しかも、研究所や取締役会議室、議事堂など、女性が歴史的に排除されてきた環境で働くことは、女性がみずからの能力を疑う結果につながることがある。

 全米有数の女子大バーナード・カレッジの学長であり、認知科学を専門とする筆者は、特に男性優位の分野で働く女性に焦点を当て、自己疑念を生む原因を究明すべく、長年にわたり研究を続けてきた。その過程で、非常に多くの要因が絡んでいることを発見した。そのなかで特に重要なのは、あからさまに、あるいは微妙な形で表れるジェンダーバイアスである。

 結果として、どういうことが起きるか。スキルの高い女性は、ステレオタイプから生じる期待に沿って考え、行動するようになる。

 これは、人生の早い段階で現れることがある。女の子は早ければ6歳で「女の子は頭が良くない」と信じ始めるようになるのに対して、男の子はみずからの知能の高さを信じ続ける。年齢を重ねると、ステレオタイプゆえに、長らく男性の領域と考えられてきた分野でキャリアを積もうとしなくなる。そして、そのような分野に女性が少ないため、次の世代の女性も、その分野に足を踏み入れようとしなくなる。

 まさに悪循環であるが、これは断ち切ることが可能でもある。