また、テレビショッピングにはもう1つ、明らかなゴールがあります。価格です。これを序盤に明かすパターンは、筆者の知る限りではありません。必ず最後です。視聴者もそれをわかっています。

「これは電子辞書の話。色々な紹介情報を経て、最終的にはそれらを踏まえた値段に辿り着くのがゴールなのだ」ということを、視聴者は開始早々に知るのです。

『アナと雪の女王』に見る
セリフに頼らない訴え方

(2)具体例で示す

 良い映画は、実に面白くわかりやすく、情報を提示してくれます。最も簡単なのは、人物のセリフで説明させることなのですが、それを多用してしまうといわゆる「説明セリフ」ばかりの単調で説得力に欠けるものとなってしまいます。

 たとえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)。主人公の大学生マーティは、タイムマシンの研究中に誤って30年前の過去にタイムスリップしてしまいます。彼の影響により、本来なら未来で結婚すべき両親の恋仲が悪くなればなるほど、彼の存在も危うくなっていきます。二人が結婚しなければマーティは生まれないわけですから。

 彼が持っていた家族写真が徐々に薄くなり、しまいには彼の身体そのものも右手の先から徐々に消えていく。存在の消滅危機を、視覚的に一瞬でわからせてくれます。

 また、『アナと雪の女王』(2013年)。有名な『レット・イット・ゴー』を歌うシーンでは、エルサが封じ込めていた能力を解き放ち、巨大な氷の城をつくり上げ、その中に閉じこもり、1人で生きる決心をする様が描かれます。爆発的なエネルギーと孤独がないまぜになった、とても良い場面です。

 もしこれらのシーンが全くなく、「ああ、僕は消えてしまいそうだ!」、あるいは「私はもう自分を抑えずに、1人で生きることにするわ」というセリフのみになったと想像してみてください。伝わってくるものが圧倒的に違いますよね。