橘玲の日々刻々 2019年3月18日

沖縄から米軍基地をなくすたったひとつの方法
[橘玲の日々刻々]

橘玲のメルマガ 世の中の仕組みと人生のデザイン 配信中

 沖縄・辺野古の米軍基地建設への賛否を問う県民投票で、「反対」71.7%の「民意」が示されました。

 この問題の背景には、米軍基地が「迷惑施設」になったという現実があります。

 日本は敗戦で連合軍(米軍)の統治下に入り、1952年のサンフランシスコ講和条約で占領が終わりますが、沖縄はそれから20年間、アメリカの「植民地」でした。

 敗戦直後の日米の「経済格差」はとてつもなく大きく、ゆたかな米軍は日本人の憧れでした。それに比べて、「日本を破滅に追いやった」旧軍の後継である自衛隊への視線はきわめて冷たく、災害救援でも自衛隊の活動はいっさい報じないのがマスコミの常識でした。

 それが変わってきたのは高度経済成長の時代で、円高で米軍基地が地元経済に貢献しなくなり、いつの間にか米兵は「迷惑なひとたち」になりました。大きな転換点は1995年で、阪神・淡路大震災(1月)での献身的な救援活動で自衛隊が大きく評価を上げる一方、沖縄ではアメリカ海兵隊員らが12歳の女子小学生を拉致・集団強姦する事件が起き(9月)、米軍基地撤廃を要求する大規模な集会が開かれました。この事件をきっかけに、住宅地の真ん中にある普天間基地を移設することになり、その候補地として辺野古が選ばれたのです。

 その後の複雑な経緯はとうていここでは書ききれませんが、沖縄の反基地感情はますます高まり、自民党に所属していた翁長知事が辺野古建設反対へと態度を変えたことで決定的になりました。翁長知事の死にともなう県知事選や今回の県民投票でも、「迷惑施設はもう御免だ」という沖縄のひとびとの強い意思は明らかです。

 これもいちいち説明する必要はないでしょうが、問題は辺野古以外の代案がないことです。鳩山元首相が「最低でも県外」と約束した民主党政権が、迷走の挙句、けっきょく辺野古への移設を容認せざるを得なくなったことが日本政府の苦境を象徴しています。「沖縄の負担軽減のため本土移設を」と述べる論者もいますが、これはただいってみただけで、いまや原発に匹敵する「迷惑施設」となった米海兵隊を受け入れる自治体など見つかるはずはありません。

 こうして安倍政権は辺野古の海の埋め立てを強行し、民主党時代の失態で脛に傷を持つ野党も批判は口だけで、沖縄の怒りと絶望はますます募るという悪循環にはまっています。

 それでも代案を出せといわれたら、唯一実現可能性が(わずかに)あるのは、「日本から米軍に出ていってもらう」ことです。トランプ大統領は、「アメリカが負担する軍の海外駐留は認めない」と断言しているのですから、首脳会談で「思いやり予算(在日米軍駐留経費負担)はもう払えません」といえば「解決」する話です。

 そうなれば日本は真に「独立」して、大量の核兵器を持つロシア、中国、北朝鮮という隣国から自力で国民・国土を守ることになります。当然、「核兵器保有」を求める大きな政治勢力が登場するでしょう。米軍の「核の傘」があるからこそ、日本の右傾化=軍事化が抑えられてきたのです。

 「沖縄に米軍基地はいらない」というリベラルは、この不愉快な現実とちゃんと向き合わなければなりません。

『週刊プレイボーイ』2019年3月11日発売号に掲載

橘 玲(たちばな あきら)

橘玲のメルマガ 世の中の仕組みと人生のデザイン 配信中

 作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『「言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)、『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)、『もっと言ってはいけない』(新潮新書) など。最新刊は『人生は攻略できる』(ポプラ社)。

橘玲『世の中の仕組みと人生のデザインを毎週木曜日に配信中!(20日間無料体験中) 


作家・橘玲の切れ味鋭い見解が毎週届く!
有料メルマガの
無料お試し購読受付中!
お試しはこちら

幸福の「資本」論|橘玲著 幸福の「資本」論 重版出来!
橘玲著

あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」。あなたが目指すべき人生は?
定価:1,500円(+税) 発行:ダイヤモンド社
購入はコチラ!
世の中の仕組みと人生のデザイン|橘玲のメルマガ配信中! 20日間無料 ザイでしか読めない!橘玲のメルマガ「世の中の仕組みと人生のデザイン」も好評配信中!
月額864円(税込)
いますぐ試す(20日間無料)

バックナンバー

»関連記事一覧を見る

海外投資必勝マニュアル&本

海外投資のノウハウが凝縮! ここで紹介しているコンテンツ、書籍はすべて、ネットから購入が可能です。さらに「海外投資実践マニュアル」は「海外投資を楽しむ会」の会員になれば割引価格で購入可能です。

作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
発売即重版決定! 橘玲の最新刊【幸福の「資本」論】発売!
橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
橘玲×ZAiONLINE海外投資の歩き方
作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
subcolumn下影

ページのトップに戻る

本WEBサイトに掲載している全ての記事およびデータについて、その情報源の正確性・確実性・適時性を保証したものではありません。本サイトの提供情報を利用することで被った被害について、当社および情報提供元は一切の責任を負いませ ん。万一、本サイトの提供情報の内容に誤りがあった場合でも、当社および情報提供元は一切責任を負いません。本サイトからアクセス可能な、第三者が運営するサイトのアドレスおよび掲載内容の正確性についても保証するものではなく、このような第三者サイトの利用による損害について、当社は一切責任を負いません。また、併せて下段の「プライバシーポリシー・著作権」もご確認ください。