それを受け、日産のある幹部は執行委員会を準備していた社員らに、TVSではなく、ホーバーを望むとするゴーン氏の意向を文章で送付。ホーバーの選定が確実になったという。

 ホーバーの創業者で会長のモエズ・マンガルジ氏は、ゴーン前会長が家族ぐるみで付き合いがある人物だった。しかも、ホーバーはパートナー会社の候補のひとつにはなっていたものの、自動車取引やマーケティングでの経験が不十分と判断され、最終候補からはすでに外されていたという。

 ゴーン氏が自分の友人を助けるために日産に負担をかけた一例だーー。同社の関係筋は日産社内の受け止め方をこう表現した。ゴーン氏がこれによって個人的な恩恵を受けたという証拠はないが、同氏に対する日産内部の疑惑調査の中で、この時のゴーン氏の言動は深刻な問題事例として浮かび上がった。そして、日産の一部役員にとって、この出来事が自社を破綻の瀬戸際から救った人物の底意に疑問を抱く決定的な瞬間になった、と社内関係者は振り返る。

経営陣は反発せず

 こうした日産側の見方に対し、 ゴーン前会長の広報担当者は、ホーバーのために介入してはおらず、提携に関する決定はすべて執行委員会が下した、と説明している。

 さらに同氏側は「根拠のない非難や特定の日産幹部による絶え間ないリークは、ゴーン氏の評判を汚すだけでなく、(仏ルノー<RENA.PA>との)アライアンスの力関係を揺るがして白紙に戻し、日産の憂慮すべき業績から目をそらさせるための明白で恥ずべき試みだ」(広報担当)との厳しい批判声明を出した。

 ホーバー創業者であるマンガルジ氏の代理人も、ホーバーには豊富な経験を持つ専門家が勤務していたとし、「ホーバーはゴーン氏や他の誰からも特別待遇を受けたとは一度も認識していない」とし、便宜供与の存在を強く否定している。