「仕事が正しくできない者は、仕事を正しくする者を非難する」

 これは、13世紀頃のチベットの学者であり、政治家でもあるサキャ・パンディタの言葉です。サキャは、真理をストレートかつ辛辣な言葉で表現するのが、特徴です。

 この言葉は相当辛口ですが、「確かに」と感じる読者は多いのではないでしょうか?

 ただし、気をつけなくてはいけないのは、「気づかないうちに自分が“非難する側”に回っていることもある」ということです。

 つまり、最近問題視されている“不機嫌な職場”を嘆いている自分こそが、「実は職場の不機嫌の原因になっているかもしれない」という、笑えないリスクを誰もが抱えているのです。

 今回は、いつもと視点を変えて、そうならないための「自分啓発の重要性」について、お話ししたいと思います。

あなたは成長努力を忘れた
ベテランになっていないか?

 これは、私が過去に行なったある企業研修の時のエピソードです。ここで私は、受講生に「皆さんの職場を不機嫌にしてしまう人にはどんな人がいますか?」と問いかけてみました。

 様々な回答が返って来ましたが、その中の1つに「人の意見を非難ばかりする人」というのがありました。

 まさに、サキャの言葉にでてくるタイプの人です。

 このタイプの人は、自説を延々と語り、人の意見を論破することで悦に入るらしいです。このような人が出席する会議は、「1人だけ気分がよく、周囲はうんざり」という状況になるでしょう。

 話を聞くと、このようなタイプはベテラン社員に多いようです。実は、ベテランには2種類あります。

 1つは、「経験に裏打ちされた洞察が物事の本質を突いていて鋭い。さすがはベテラン」と周囲に思わせる人です。その人に意見をされても、非難されたというよりも「ためになった」という気分になるベテランです。