組織に属する人なら、多かれ少なかれ「ヒト」にまつわるトラブルに遭遇したことはあるはずだが、スタートアップの経営陣のトラブルとなると、今後の成長にも大きな影響を与えかねない。須田氏はコミュニケーションの食い違いで生まれた「絡まった糸」をほどくのが役割だというが、果たしてどのような解決策を提示しているのか。

「意見の対立で収集がつかなくなったら、『とりあえず一緒にご飯を食べて、風呂に入ろう』と提案しますね。経営合宿をやるなら、誰か幹部の実家の近くにするなどの工夫をします」

 感情の問題をうまくまとめる秘訣があるわけはない。基本的には人と人とが向き合う環境を作って経営者の悩みを解きほぐしていく。

「こうすればトラブルが解決する、なんてロジカルなセオリーはありませんよ。むしろいまのベンチャーは、KPIがどうこう言って数字ばかり追いかけてしまうことが多い。どんな高校に通っていたとか、どんな食べ物が好きかといった『人間と人間』のやり取りをしっかりしていないと、論理や数字の話なんかしても意味ありませんよ」

いまの起業家は「どこかのビジネス本」に引っ張られすぎ

 とはいえ、須田氏は決してロジックを嫌う感情型の人物ではない。むしろ、ソフトバンク時代から無数の資料を作り続け、その資料制作のノウハウを『ショートカットキー活用事典』(インプレス:Jin名義)として出版したこともある「作業効率化マニア」だ。そんな彼からすれば、いまのベンチャーは「教科書」に引っ張られ過ぎて自分の頭で判断をしない傾向にあるという。

「多くのベンチャーで目にするのは、ビジネス本に書いてある手法を鵜呑みにしてしまうことです。例えば、資金政策でよくあるのは、採算がとれていない部門に売り上げ以上の資金を投下し続けてしまうケースです」

「どこかのビジネス本に、『ベンチャー創業期は赤字になってもいいから先行投資すべき』と書いているんでしょうね。普通の会社だったら予算と実績が合っていなければ週単位で見直しが入りますが、ベンチャー経営者が『いまは市場を掘るフェイズだから』と言うとなかなかストップをかけられないんです」

 ビジネス本のメソッドに踊らされずに、素直に数字を見て絶えず現状を把握してほしいと語る須田氏。「金融関係者の方から、『(赤字経営を続ける)ベンチャー経営者ってバカなの?』と言われたこともありますよ」と辛辣な言葉も飛び出す。