「団塊の世代」の名付け親である堺屋太一氏が今年2月に逝去し、彼の遺した大作『平成三十年』が再び注目を集めている。

堺屋太一さん堺屋太一さん

 本書は約20年前に生まれた近未来小説で、作中では平成30年を生きる“未来人”の世界が仔細に描写されており、20年越しの「予言小説」として世に衝撃を与えている。

「当たった・外れた」といった観点からも楽しめるが、本書の白眉は、今の日本を漂う「時代の空気」を的確に捉えている点だ。副題の「何もしなかった日本」にあるように、改革を不得手とする日本型組織への警世の念も込められており、むしろ我々“未来人”に刺さる内容ともいえる。

 今回は特別に本書から、2003年に堺屋太一氏が記した「文庫版あとがき」を公開する。

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「平成三十年」と題する小説を、朝日新聞朝刊に連載したのは、1997年(平成9年)6月1日から翌98年(平成10年)7月26日までである。

 ここで私は、新聞読者に実感して頂けるように掲載の時期と小説の中の季節を合わせることに努めた。物語のはじまりは6月1日、香港返還20周年行事場面は7月1日から、主人公が父親の故郷の盂蘭盆に行く話は8月中旬の掲載というわけだ。平成30年正月の場面は、平成10年1月1日からの掲載である。つまり、新聞読者の方々には、ほぼ正確に20年先の話をお読み頂くようにしたのだ。