統計不正より問題なのは「素直でない」景気判断政府の景気判断がしっくりこないのは統計不正が原因ではなく、「素直な判断」ができていないからではないか(写真はイメージです) Photp:PIXTA

 毎月勤労統計など政府統計の不正問題が注目を集めている。確かに、統計が信頼できなければ景気判断にも影響する。景気判断がしっかりしていなければ、適切な経済政策の運営はおぼつかない。しかし、政府の景気判断がしっくりこないのは統計不正が原因ではない。「素直な判断」ができていないからだ。

確かにひどかった統計不正
官邸の介入疑惑で問題が複雑に

 賃金統計における不正の問題は、かなり深刻だ。まず、全数調査を行わなければいけない東京都の事業所(従業員500人以上)について、サンプル調査に切り替えていたのはルール違反である。また、サンプル調査を行っていながらそのデータを抽出率に合わせて全数調査に近い数字に戻す復元作業を行っていなかったことは、統計を作成する上での基本的な認識が欠けていたと言わざるを得ない。

 さらに問題なのは、復元作業を2018年から行うようにしたことだ。東京都の大規模事業所の賃金水準は高いのだから、復元していない2017年と復元した18年のデータを比べれば、18年の伸びが高く出てしまうのは当然だ。18年に入って賃金の伸びが急に高くなったので「何か変だな」とは思っていたが、まさかこんなことが行われていたとは思わなかった。

 サンプル入れ替えによって賃金統計が下がることが過去にもあり、賃金統計の伸び率の数字が低すぎるのではないかと懸念する政治家の発言もあった。このため、官邸の意向を忖度して18年の賃金の伸びが高くなるような数字を出したのではないかと、野党は国会で政府を追及している。こうした疑念が出ても仕方がないほど、今回の不正統計の問題はひどい。