ある自動車メーカー幹部は「トヨタの技術は、機構が複雑で高度な電子制御が必要。特許を無償提供してもらったところで、どの社も自前で開発する経営資源や量産ノウハウ、時間がないだろう。トヨタから部品やシステムを買ったほうが早い」と話す。

 SBI証券・シニアアナリストの遠藤功治氏は、何から何まですべて開発・生産する完成車よりも「システムサプライヤーのほうが利益率は高い」と指摘。1997年の世界初の量産HV「プリウス」発売以来、20年以上かけて磨いてきた電動車の「心臓」部品を他社へ提供するという戦略は「頭が良い」と評価する。

 特に電動車の場合、その種類と需要動向は各国の政策や環境規制に振り回される。例えば、規制により燃費改善が急務な中国の自動車メーカーのHVへの関心は高く、中国メーカーの電動車にトヨタのシステムを広く普及させられれば、中国政府の施策にも一定の「影響力を持つことができるかもしれない」(遠藤氏)。

 また、三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、特許無償開放による仲間づくりによって国内外で部材調達面でのシナジーが見込まれるとし、HⅤ関連部材のコストダウン効果は「中長期的に年間1000億円を上回る可能性がある」と試算している。

当面はHV、EV・FCVも視野に仲間づくり

 自動車メーカー各社は2030年代に向けた世界的な燃費規制強化への対応に迫られている。特に日産自動車や海外勢はこれまで規制に対応できる環境車の本命としてEVに力を入れてきており、トヨタの優位性を崩しにくいHVには消極的だった。

 しかし、EVの本格的な普及には電池の性能やコスト、航続距離、インフラ整備など課題がまだ多い。顧客にEVを選んでもらえるかどうかも大きなハードルで、各社は各国規制の目標達成のために、つなぎの技術であってもHVを無視できなくなっている。