複数の市場筋によると、交渉で為替条項を突きつけられ円高が進行した場合に、ドルの下値で買いを狙っていた参加者が少なくなかった。米が通商交渉に付帯させる為替条項は、国内世論へのアピールを重視したもので、環太平洋連携協定(TPP)や米・メキシコ・カナダの貿易協定(USMCA)と同様、実質的な効果はあまりないとの見方が多かったためだ。

 しかし、ドルはこの日も112円付近で底堅い動きとなり、押し目待ちの戦略は画餅に終わった。「なかなか下がらないドルを買う機会を逸している参加者が増えており、買いオーダーを切り上げざるを得なくなっている」(大和証券・投資情報部チーフ為替ストラテジスト、今泉光雄氏)状況に追い込まれているという。

遠のく危機、売られる円

 円に売り圧力がかかりやすくなっているのは、世界経済のリスクとされる様々な問題が下火になり始めたことも一因だ。米国主導の国際通貨基金(IMF)ですら懸念を隠さない米中貿易摩擦には両国の歩み寄りが見え始め、日本の機関投資家が運用難の環境下で頼みの綱としてきた欧州で目立っていた景気の減速懸念にも、 欧州中央銀行(ECB)は利上げの先送りで景気を下支えする姿勢を明確にした。

 さらに英のEU離脱期限は、10月まで先送りとなり、無秩序離脱が世界経済を混乱に落とし入れるリスクは当面後退。中国ではこの日発表の第1・四半期国内総生産(GDP)が予想を上回る前年比6.4%増となり、少なくとも経済指標の改善は続いている。景気減速の前触れとされる米長短金利の逆転も、今月に入り発生していない。

 楽観論の復権は早くも市場のあちこちに表れている。47ヵ国の指数で構成するMSCI世界株価指数は昨年末からV字回復で、昨年10月以来の高値を奪回。新興国通貨指数も昨年6月以来の高値圏となる年初来高値に接近してきた。