誰であっても、どこかに所属していたいという本質的な欲求がある。それは仕事でも同じだ。自分の居場所を見出している人は生産的でモチベーションも高まる。だが実際には、職場で帰属意識を感じることができず、むしろ孤立感を抱く人が多い。この重大な問題を簡単に解決する方法がある。「調子はどう?」などの簡単な声かけである。本記事では、同僚と言葉を交わす際に有効な5つのポイントを示す。


 我々人間は、どこかに所属していたいという本質的な欲求を持っている。属する先は、ある特定の人かもしれないし、友人たちや家族、文化や国家かもしれない。

 それは働いているときも同じだ。筆者らがセンター・フォー・タレント・イノベーションで実施した調査によると、職場に自分の居場所を見出している人は、より生産的でモチベーションも高く、熱心に仕事に打ち込む。組織への貢献度についても、自分のポテンシャルを最大限に発揮できる可能性が3.5倍も高まるという。

 この帰属感、また、その逆である孤立感の感情面への影響をより深く理解すべく、筆者らはEY帰属指標調査を実施した。1000人の米国成人労働者を対象に調査を行った。

 すでに孤立感の問題が大きくなっているというエビデンスがあり、この調査結果も、それを裏付けるかたちとなった。対象者の40%が、職場において物理的、ないし感情的な孤立を感じていると答えており、そう回答したグループは、すべての世代や性別、民族にまたがっている。

 事実、最も強く帰属意識を感じる場所として、大多数の人が挙げたのは自宅(62%)で、職場(34%)ではなかった。職場は近隣コミュニティー(19%)や信仰の場(17%)より優っていたとはいえ、多くの人が起きている大半の時間を過ごす場所であるだけに、誰もが居場所を見つけられる場として職場の環境を整えるのは緊急の課題である。

 このことからわかるのは、多くの人が職場でともに働く人たちと、もっとつながりを持ちたいと望んでいることだ。では、従業員同士がより効果的につながりを築き、職場への帰属意識を高めるに、企業はどうすればよいのか。

 筆者らの調査結果は、シンプルなソリューションを提示している。すなわち、同僚同士が気軽に声をかけ合い、言葉を交わす機会を設ける、というものだ。

 前述の調査では、39%の回答者が、同僚に声をかけられ、仕事上のことであれ、個人的なことであれ、言葉を交わすときに最も強く帰属意識を感じると答えている。その結果に、性別や世代は関係なかった。回答者の世代を問わず、声をかけ合うことは、帰属意識を築くうえで最も一般的な方策だった。

 企業やリーダーたちが、従業員と「調子はどう?」と個人として言葉を交わすことで、従業員は自分の価値が認められていると感じ、つながりの感覚を持つことができ、職場における幸福感も大きくなるのだ。

 一方、帰属感を高めるのに効果のなかったコミュニケーションは、どのようなものだったのか。個人的な要素のない、上層部リーダーとの面談である。シニアリーダーに盛大な社外イベントやプレゼンに招待されるといった体験は、メールを同送されることと同様に、帰属意識を高める効果は、ほぼなかった。