それでもなお、ギリシャが財政緊縮路線を断固として放棄するのであれば、①かつてのアルゼンチンやロシアのように、ギリシャ側が一方的に債務返済のモラトリアムを宣言するという無秩序デフォルトを断行するか、もしくは、②ギリシャが国家主権としての通貨発行権を行使してユーロ圏を離脱し、新ドラクマを導入して、対外債務を実質的にデフォルトさせる、というアプローチをとるよりほかにないと考えられる。

 新ドラクマを導入し、変動相場制を採用すれば、大幅なドラクマ安が進展して、ギリシャ債務のユーロ建ての価値は大きく膨張し、事実上、返済不能となろう。同時に、輸入インフレを通じて高インフレとなれば、ギリシャ側の実質的な債務負担は軽減される可能性もある。

 ただし、ギリシャの対外取引は事実上不可能となり、経済は大混乱し、多大な影響が及ぶものと考えられる。こうした事態を回避しようとするのであれば、ギリシャが資本規制を合わせて実施し、固定相場制を採用する方向もあり得なくはないが、ユーロ圏側がこうした対応を果たして容認するかは見通せず、ギリシャ側が固定相場を維持し切れるかも定かではなく、ハードルは高い。

チェコスロヴァキアに見る
通貨同盟解消の歴史的事例

 ギリシャではすでに民間銀行での預金流出の動きが強まっている。今回のケースでは、今後、ギリシャ国内ではユーロが使えなくなる可能性もあるが、ユーロという通貨自体は、ギリシャ国外では、今後も、基軸通貨の一つとして変わらぬ価値を持ち続けることは確実だ。

 貨幣には一般的に、①価値の表示(尺度)手段、②決済手段、③価値の保蔵手段という3つの機能があるが、ギリシャ国民は、このうちの③の、自らの保有する金融資産の価値を保蔵する手段として、ユーロ現金を手元に引き出しているものとみられる。

 通貨の切り替えには混乱がつきものだが、それが事前に国民に察知され、資金流出の動きが強まれば、自国の金融システムを維持できなくなるなど、通貨切り替えに際して、発生する混乱はさらに大きなものとなってしまう。