◎薬は、あくまでも味方として

 長年、不眠外来に通院して睡眠導入薬を飲み続け、睡眠習慣の助言を受けても、なかなか神経質性不眠が改善しないケースも見受けられます。睡眠に関するとらわれが強い方は、森田療法の外来を受診するのも、改善のきっかけになるかもしれません。

 森田療法は、薬を一切使わないわけではありません。睡眠薬を飲むか飲まないかということより、生活を充実させていくことの方がはるかに大切だと考えます。ですが、薬は味方につけてもよいのです。

◎うつ病の睡眠障害には、神経質性不眠とは違ったアプローチが必要です

 うつ病の患者さんは、睡眠障害がある方がほとんどです。うつ病が原因で眠れない状態が続いている場合、睡眠導入剤だけでよくしようとしても、また森田療法で不眠恐怖を克服しようとしても改善が得られません。抗うつ薬の服用などうつ病自体の治療を行うことにより、病気が改善するにつれて睡眠の質もよくなっていくものです。

◎寝酒は睡眠の質に悪影響を及ぼします

 高齢の男性は、前立腺肥大などで夜間頻尿が起こる傾向がありますから、夜中に尿意を覚えて目が覚めやすく、いったん目覚めるとすぐに眠りに戻れないことがよくあります。

 こうしたつらさは理解できますが、眠るためにお酒を飲んだりすると、睡眠の質が悪くなり、疲れが取れにくくなります。睡眠薬を飲むよりはお酒を飲んで寝た方が安心と思われる方も多く見受けられますが、実際には薬よりもアルコールの方が睡眠の質を損ない、また酒量も次第に増えていくために肝機能障害なども生じやすくなります。

 夕食時に飲む適量の酒はストレス軽減に役立ちますが、眠るために深酒することにはくれぐれもご注意ください。

※本稿は実際の事例・症例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため相談者の個人名は伏せており、人物像や状況の変更などを施しています。ご了承ください。

◎中村敬(なかむら・けい)
東京慈恵会医科大学附属第三病院院長、精神医学講座教授、森田療法センター長。日本森田療法学会理事長、日本サイコセラピー学会理事、日本精神神経学会代議員など。著書(編書)に『よくわかる森田療法 心の自然治癒力を高める』(主婦の友社)、『神経症を治す』(保健同人社)、『森田療法で読む社会不安障害とひきこもり』(白揚社)など多数。寝たきりを予防するための行動変容外来への助言、メディカルヨガへの森田療法の導入など、森田療法の汎用性を活かした幅広い活動も展開中。2019年8月の国際森田療法学会(中国)は「人間哲学としての森田療法を世界中に広げよう」がテーマ。