◎正馬語録(心の健康管理に役立つ、森田正馬の心に響く言葉)
(5)心頭滅却:「苦痛そのものになりきること」
【解説】心頭滅却とは、苦痛に対する想像すなわち精神交互作用(不眠に注意を集中するほど、ますますこまごまと眠れない状態が明らかになり、これを恐怖するほど、ますます注意がそのほうに集中するようになるという関係)をまったく止めることで、すなわち苦痛に対する批判をやめて、苦痛そのものに「なりきる」ことである。これによって神経質の症状は、本来観念的なものであるからもちろん全治する。
(『森田正馬全集』(白揚社)第5巻93ページより)

◎ワンポイント解説
 神経質性不眠症の治療で最も大切なのは、この「なりきる」ということです。森田療法は神経質性不眠に対し、古くから「不眠に対してすべき心配恐怖はうんとすればよい」と逆説的助言をしています。森田正馬は「不眠患者は、昨日よく眠れなかったと考えては朝寝をし、昼は頭がぼんやりするといってノラクラすることを繰り返すので、それでは調和が取れてゆくからその不眠はいつまでも治るはずはない」と指摘します。「眠っても眠らなくても7~8時間以上床に就いてはいけない。頭は重くとも日中は必ず何かと立ち働いていなければならない」という睡眠時間制限療法を奨励しています。森田療法を通じた克服の事例は、患者さんが人生を必死に生きて、成長を遂げていくプロセスです。同じように悩んでいる方々の希望が、そこにあります。

◎次回予告
 第6回では、「病気不安症」から脱する処方箋(しょほうせん)を、中村先生に伺います。