対中関税25%でもアップルがiPhoneの中国生産をやめられない理由Photo:iStock/gettyimages

4月30日にアップルは1月~3月四半期の業績発表を行った。従来は4月第1週ごろに発表するのが恒例だったが、それが月末までずれ込んだことで悲観的な予測が飛び交っていた。

『アップル さらなる成長と死角』の著者であり、アップルでの勤務経験を持つ竹内一正氏が、トランプ大統領による対中関税25%への引き上げの動向をにらみつつ、最新のアップルの業績内容を分析し、その行方を占っていく。

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売上高が前年割れなのに
アップル株価が上昇の謎

 アップルの1月~3月四半期の売上高は約580億ドル(約6兆4000億円)、前年同期比で5%減と世間をガッカリさせた。さらにiPhoneの売上高は約310億ドルで、これは前年同期比17%減となり、総売上高に占める割合は前年の約61%から約53%へ低下した。そして、中国での売上高は22%減少した。

 ここまで見れば、アップルの株価はダウンしてしかるべきだ。ところが、なぜか業績発表後にアップルの株価は約5%アップしていた。その理由は、「アナリストの予想よりも良かったから」といわれているが、すんなり納得できないのは私だけではないだろう。なぜなら、アップルを追撃するファーウェイの業績が華々しかったからだ。

 まず、ファーウェイの2018年の売上高は約1074億ドル(約12兆円)でアップルの半分以下だが、ポイントは成長率で、前年比19.5%増となっている。純利益は約88億4000万ドル(約9800億円)と前年比25%の増加を示し、勢いを見せつけた。

 さらに、2019年1月~3月四半期では約270億ドル(約3兆円)の売上高を記録。これは前年同期比39%増で、米国でのファーウェイ排除の動きもなんのそのだ。ファーウェイは第1四半期で全世界において5900万台のスマートフォンを販売し、5Gに関連してグローバル通信事業者と40件の商業契約を締結、7万台以上の5G基地局を出荷していた。

 こうして眺めればアップルは“売り”で、ファーウェイは“買い”となるはずだが、投資家たちはアップルに声援を送りたいようだ。