ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
インキュベーションの虚と実

なぜスゴそうな人も大ゴケするのか?
テーマで間違うスタートアップ

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第5回】 2012年6月18日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
3
nextpage

日本のスタートアップは
似てる、こじんまり、クール

 一方、日本はどうだろう。調査データはないが、筆者がみたところ、スマホやソーシャルメディアをベースとしたコンシューマー向けサービスが多く、偏りが激しい。しかも、「似たような内容のサービスが多い」と言うスタートアップ関係者は少なくない。

 ある著名大学教授は「iPhoneとかAndroidとか新しいプラットホームが出てくると、泡沫の如く、学生ベンチャーが湧いてくる」と言う。プラットホーム上にのるものに注目が行くのは時代の必然だが、個人でiPhoneアプリを作っていっちょあがり、といったことの延長であれば、大きな事業にはならない。日本にはポテンシャルが大きいスケーラブル(大きく育つ)なテーマでなく、こじんまりとしたスタートアップが多いのだ。

 ベンチャー・キャピタリストの中には、「海外のサイトで勉強して情報は色々と知っているが、それを上辺だけとらえてスタートアップしているから、深さがなく、一皮めくると中身がおそまつなことが多い」、あるいは「際立ったテクノロジーもないし、ニーズと遠く離れていて、ビジネスになっていないものも多い」と、昨今のネット系スタートアップに苦言を呈する。

 ある起業家は、「日本は面白そうとかCool(クール)なものを追いかけ、米国は問題を解決するスタートアップが主」と語る。起業家は〇〇をするというアイデアから入りがちだ。しかし、大きな問題を解決する(あるいは大きなニーズを満たす)アイデアでなければ、意味がない。問題よりも先にソリューション(〇〇をする)を思いつく現象は米国でも見られるが、日本の方が顕著だ。それに、米国と違い、日本では売上見込みなしのアイデアでも、平気で起業に踏み切ることが多い。

 これらから見えてくるのは、日本のスタートアップはテーマが似たり寄ったり、こじんまり、クール、ということだ。もちろん、スタートアップは一つ一つ個別に議論されるべきだが、全体のトレンドに影響される起業家もいるだろう。スタートアップはテーマが命。打ち込むテーマは、ポテンシャルのあるもの、自分らしいものを選びたい。それには、思いつきにとどまらない、もう一段の深掘りが必要だ。

ひとりよがり?思い込み?
テーマは妥当か?

 どういうテーマがよいか、あるいは間違いか、これは難しい問いだ。過去にも、多くの人に理解されなかったが大成功した例はある。筆者も、すべてのテーマを評価することはできない。ツイッターもそうだが、大成功するテーマを見出すことは特に難しい。しかし、これはキツイとか、無理だといったダメ出しはかなりの確率でできると考える。

previous page
3
nextpage
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

⇒バックナンバー一覧