今週号の週刊ダイヤモンドで、マスメディアの苦境が特集されています。丹念に調べてあり、非常に良い出来だと思いましたが、お先真っ暗というレポートが中心で将来に向けたインプリケーションが少ないようにも感じました。取材はされませんでしたが私もメディア論が専門なので(笑)、今回はマスメディアのこれからを考えてみたいと思います。

マスメディアはお先真っ暗か?

 マスメディアは、成長産業であるクリエイティブ産業の中核に位置する大事な産業ですが、特集にもあるように、大変厳しい状況に追い込まれつつあるのは事実です。ただ、本当にお先真っ暗かというと、私はそうは思いません。

  今苦しいのは、マスメディアが昔ながらのビジネスモデルに拘泥し、また事業再生に真剣には取り組んでいないからです。逆に言えば、ビジネスモデルを今の市場環境に合った形に進化させれば、苦境から脱することは十分に可能なはずです。小泉構造改革の経験から、苦しいときほど改革を進めるチャンスです。マスメディア各社がこれからの数年をどう過ごすかで、繁栄を取り戻すところと淘汰されるところに分かれるでしょう。

 そもそも、今マスメディアが経験していることは、同じクリエイティブ産業に属する音楽業界が経験済みです。日本のCD売上は1998年がピークで6千億円でしたが、デジタルやインターネットの影響で右肩下がりに売上が落ち、昨年は3千3百億円にまで減少しました。それでも、着メロなど様々な分野で売上を積み重ね、ちゃんと頑張っています。

 音楽の世界でCDがなくならないであろうことと同様に、テレビと紙という媒体は絶対になくならないでしょう。ただ、インターネットの出現で市場環境が激変した以上、全体の売上の中で占める比率は下がらざるを得ません。そこで重要になるのは、新しい市場環境に合った形にビジネスモデルを進化させられるかです。そして、市場環境が変化する中でもマスメディアが繁栄を続けられるかは、クリエイティブ産業が本当の成長産業になれるかの試金石でもありますので、頑張ってもらわなくては困るんです。