トランプ治世に翻弄される米国経済と金融政策の行方米国経済は改善の兆しが見られる一方、トランプ大統領のFRBへの圧力や中国との貿易摩擦再燃の懸念により、不確実性が高まりつつある Photo:PIXTA

 足元の雇用環境は、雇用拡大、賃金上昇と引き続き堅調に推移している。昨年来、海外経済の減速や政府機関の一部閉鎖、悪天候などの要因で減速していた米国経済も、足元で改善の兆しが見られる。他方、トランプ大統領のFRBへの圧力や中国との貿易摩擦再燃の懸念により、米国経済の不確実性が高まりつつある。

内需の拡大によって
改善の続く雇用環境

 2019年4月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月から26.3万人増加した。3月に続き2ヵ月連続で雇用環境改善の目安とされる+15~20万人の増加ペースを上回り、米国の雇用は引き続き力強く改善していると評価できるだろう。

 業種別に見ると、製造業は前月差+0.4万人と緩慢な増加に留まった。製造業は、後述するように、海外景気の減速や貿易摩擦の影響などにより企業活動が停滞している。特に、自動車産業は在庫の積み上がりもあり、雇用の削減が続いている。製造業の雇用は今後も停滞が続く見込みである。

 他方、雇用者数の大部分を占めるサービス部門は前月差+20.4万人増加した。医療や業務サービス、飲食など幅広い業種で増加が見られ、引き続き堅調と言えるだろう。雇用者数が増加し、賃金も増える中で内需が底堅く拡大していることが影響していると考えられる。

 米国の雇用環境は外需の減速による抑制が続くものの、内需の拡大に伴い改善が続いている。

 失業率は前月から0.2%pt低下し、3.6%と49年ぶりの低水準となった。3月に発表されたFOMCメンバーの2019年末の失業率見通しは3.7%なので、すでにその水準を下回ったことになる。