「失われた20年」と呼ばれる経済の停滞、そして昨年発生した東日本大震災――。日本を襲うこれらの試練に我々が立ち向かうため、新しい価値観の創造を呼びかける人々がいる。それが、都内公立校初の民間登用で杉並区立和田中学校長を務めた藤原和博氏、カリスマ経営コンサルタントの神田昌典氏、そして3.11後に日本最大級のボランティア組織「ふんばろう東日本支援プロジェクト」を設立した早稲田大学大学院(MBA)専任講師の西條剛央氏だ。

今回も前編に引き続き、『坂の上の2022』と題して10年後の日本であるべき教育の姿を語り合った3人の鼎談の模様をお伝えする。果たして日本は2022年までに、教育によって社会に変革を起こせるのか。後編では、3人が理想とする「将来の日本教育」を実現するための現実的かつ具体的な方法を提言する。

子どもが自ら考えるチカラを育む
「よのなか科」の授業とは

――多くの小学校では、数人が積極的に発言をするものの残りは見守っているだけという光景をよく見かけ、子どもたちが自ら考える力を放棄しているという印象を受けます。そうした状況を変え、自分の意見を持つ子どもを育てるには、どういうステップを踏めばよいでしょうか。

藤原和博×神田昌典×西條剛央 特別鼎談【後編】<br />普通の公立小中学校も“あの和田中”に生まれ変わる!?<br />10年後、日本が生き残るために必要な教育改革藤原和博さん

藤原 それはつまり、西條さんもおっしゃっていた「民主主義2.0」(前編参照)を目指すことだと思いますが、そのためには考えるとはどういうことかを知り、納得解をどのように紡ぎ出していくかという作法を学ばなければなりません。西條さん、そうですよね?

西條 そうです。

藤原 先生や親って、「もっとよく考えろ」とよく言いますよね。でも、そのとき子どもはこう思います。「もっと考える」とはどういうことか、と。それなのに今の学校では、考えるノウハウや作法が全く教えられていません。

 その手法は、マインドマップのようなものでもいいと思いますし、僕が実際に和田中で使ったマインドチャートという、自分の思いついたことを全て図式化した方法でもいいでしょう。例えば、「あのハンバーガー店はなぜ流行るのか」などといったテーマを設定し、5人ほどが1組になって付箋にたくさんのアイデアを書き込みます。同じ意見は同じ位置、近い意見は近い位置に付箋を貼らせるなどして分類を繰り返し、議論をします。これが「よのなか科」の授業方法です。

 今、「よのなか科」は250校ほどに導入されていると思いますが、品川区では独自で総合学習の時間や特別活動などを融合させた「市民科」という独自のカリキュラムを作っています。つまり、市民として人生を営むためには「正解ではなく、納得解を出すことが必要だ」ということを学ばせる、かなりチャレンジングな授業を行っているんです。

 全国には小中学校が約3万校ありますから、現状でそうした取り組みができているのは、多く見積もっても1割に届かない2000校ほどでしょう。ただし、あるパーセンテージを超えると、一気に普及していくという試算もありますから、この2、3年が潮目の変わるときかもしれないと思っています。