また、冒頭の筆者が参加した宴会でいえば、「自分はこの中では若くて下っ端だから」という遠慮が働いたわけだが、「若いんだから、たくさん食べたほうが身分相応なのではないか」という逆の考えをすることもできる。普段は食べられないような豪華なメニューをありがたがって食べる態度こそ、下っ端としてあるべき姿なのではないか、と。

 実際に筆者も30代後半になって、油物はあまり多く食べられなくなった。若い人たちと宴会するときは、むしろ多めに食べてもらったほうが胃に優しいし、気分もいい。少なくとも、無駄に残してしまうよりは、どれだけ気持ちがすっきりすることか。

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 とはいえ、最後までくすぶり続ける問題は、やはりあの「一品だけ残っている」という気まずさであろう。どんなに合理的に考えて、この一品に手を出すことは失礼でもマナー違反でもないと判断したとしても、「あっ、あいつ最後の一品に手を出したな」という注目を集めてしまうことに、ためらいと羞恥心を感じてしまうのは免れない。

 結局は、平成から残る「忖度」という日本社会にはびこる悪習が、まだ令和の時代にも残っているということなのだろうか。丹精込めて作って提供してもらったメニューを無駄にしないため、そして楽しいはずの宴会に気疲れする心理戦を持ち込まないためにも、「残ってるこの一品、もらっちゃいますね!」と気軽に言える風通しの良い社会にしていきたいものだ。

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(フリーライター 宮崎智之)