多くの働く父親にとって、仕事と家庭の両立は難しい問題である。家庭を犠牲にして仕事で成功すべきではないし、同じように、家庭のために仕事を妥協するのも本意ではない。こうしたワーク・ファミリー・コンフリクト(仕事と家庭の葛藤)を、どう乗り越えるべきか。筆者が5人の最高幹部職を務める父親たちにインタビューした結果、4つのポイントが見えてきた。


 多くの人と同様に私も、職場における仕事と、家庭における責任のバランスの取り方についてよく考える。

 私は夫であり、4人の子を育てる父親でもある。仕事での成功は家庭を犠牲にして成り立つべきではなく、また、家族の時間をつくるために自分の会社経営を妥協すべきでもないと考えている。

 これは、多くの働く親が今日直面するワーク・ライフ・バランスのジレンマである。私はこのジレンマを強烈に感じたので、その経験を本にまとめた。しかし執筆を進める間、何度となく1つの質問を浴びせられることになった。

「父親は、ワーク・ライフ・バランスを本当に大切だと思っているのか」

 ボストンカレッジ・センター・フォー・ワーク・アンド・ファミリーは、父親が家庭と職場で果たす役割の変化に注目している、数少ない機関の一つである。同センターによれば、上記の質問への答えは、明快な「イエス」である。

 同センターの最近の調査結果によると、父親は、女性の配偶者と比較して少なくとも同程度、あるいはそれ以上のワーク・ファミリー・コンフリクト(仕事と家庭の葛藤)を経験する可能性がある。

 同調査では、20代であるミレニアル世代の父親のうち、80%から90%がキャリアアップを望んでいる一方で、それを果たすために「プライベートや家族の時間を喜んで犠牲にする」との項目に「強くそう思う」と回答した割合はわずか4%だった。調査対象となった男性は、ワーク・ライフ・バランスが成功を測る基準として最初に考慮する要因であり、仕事を選択する基準としては3番目に重要な要因(母親たちの回答では第1位)であると評価した。

 では、年代を問わず、仕事も家庭も大切にしたい父親は、どうすれば適切なバランスを取れるのだろうか。最高幹部職にあり、また家族持ちでもある5人の男性に私は取材し、彼らが部下でもある父親たちにどのようなアドバイスをするかを聞いた。

 5人の肩書きは、最高経営責任者(CEO)、社長、最高人事責任者(CHRO)、エグゼクティブ・バイス・プレジデント(EVP)兼ゼネラル・マネジャー(GM)、そしてエグゼクティブ・ディレクターと、各自異なる。彼らの子どもの年齢もさまざまだ。3人の幼い子どもがいる親、小学生の子どもがいる親が2人、ティーンエイジャーがいる親、そして成人した子どもが3人いる親だ。

 だが、彼らとの会話から、以下の4つの共通テーマが浮き彫りになった。