米国市場は、トヨタに限らず、世界の自動車産業にとって、年間約1700万台を販売する重要な収益センターだ。しかし、トランプ大統領は外国メーカーの輸入車に最大25%の関税を課すと言明。今月17日には輸入自動車や部品に対する関税の判断を最大6ヵ月延期すると発表したが、一部の輸入車と部品が国家安全保障上の脅威になると主張した。

 豊田社長はワシントンでの講演で「なぜ国家安全保障上の脅威と呼ばれているのか理解できないし、心が痛む」と語り、「私が約束したいのは、議論がどのような方向に向かうにせよ、トヨタは米国を離れることはないということだ」と訴えた。

出遅れの中国市場拡大へ勢い

 一方、他社より出遅れている中国市場での追い上げも緊急課題だ。中国での2018年の販売台数は各社の合計で2800万台と米国をしのぐ水準となり、電気自動車の促進や普及を見込んだ新たな投資を呼び込んでいる。

 トヨタは米国市場で14%のシェアを握っているものの、中国での昨年のシェアは5.3%にとどまり、販売台数149万台はフォルクスワーゲン(VW)やゼネラル・モーターズ(GM)の半分にも満たない。

 中国は歴史的な理由から日本企業にとって時には難しい市場となり、自動車メーカーも例外ではない。尖閣諸島(中国名:釣魚島)をめぐる問題から、2012年の中国での日本車販売は大きな打撃を受けた。しかし、昨年5月に日本を公式訪問した中国の李克強首相は、豊田社長の同行で北海道の同社工場を見学。中国事業拡大への機運は高まっている、とトヨタ関係者は指摘する。

 トヨタは中国での生産体制拡充に乗り出し、天津と広州工場での生産能力をそれぞれ年間12万台ずつ増強する計画だ。ある部品メーカー関係者によると、今後5-6年で毎年10%の販売増を見込んでおり、2020年代半ばまでに年間約300万台の売り上げを目指す。その環境づくりとして、中国指導部との友好促進へ流通網や技術共有も着々と進めつつある。

「中国政府がトヨタをサポートしてくれているが、決して調子に乗らないこと。(やるべきことを)地道に継続していれば、日中関係が悪くなった時、その成果が見られると思う」。豊田社長は4月23日の幹部会合でこう語り、中国市場での信頼醸成の必要性を強調した。

 米中貿易摩擦の激化で、トヨタの対中戦略には「米国への配慮」という新たな要請が生まれた。対立を深める二大市場の両面作戦は、決して容易ではない。先月の上海モーターショーで、トヨタは国際メディア向けの記者会見を取りやめたが、関係筋によると、これは豊田社長が関税引き上げや米国の輸入枠などについて米国を過度に刺激しないよう、慎重なメディア対応を求めたためだという。

(白水徳彦  編集:北松克朗、村山圭一郎)

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