世界最大の小売企業であり、EDLP(エブリデー・ロープライス:毎日安売り)モデルで世界を制したウォルマートが変身中だ。新店と海外への投資を実質凍結し、デジタル分野に集中投資しているのだ。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

 2019年3月、米国テキサス州オースティン。テック企業が新技術を持ち寄る恒例のイベントSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)に、観客が予想していなかった“新顔”が登場した。ウォルマートだ。

 カンファレンスに登壇したジェレミー・キングCTO(最高技術責任者。当時)は、VR(仮想現実)ヘッドギアを装着した店員や、AI(人工知能)を実装したロボットが、ECで受注した商品を素早く集める様子を紹介した。そして「われわれはいまテック企業としての組織を築いている」と断言したのだ。

 1年365日いつでも競合店より最も安い価格で商品を提供する、EDLPモデルで成長してきた、世界最大の小売企業ウォルマート。19年1月期の営業収益は5144億ドル(約56兆円)。これは、イオンとセブン&アイ・ホールディングス(HD)の営業収益の合計額の4倍近い(図1)。この“巨人”は、いま変わりつつある。