アップル、テスラ、ザッポス、サウスウエスト航空……称賛を浴びる企業は強烈な文化を持っている。独自の企業文化は、従業員の仕事への意欲を引き出し、組織のパフォーマンス向上にもつながる。だが、会社の色に染まることを半ば強制され、多様性が尊重されなくなったら、それはカルトである。従業員を奴隷化するような組織からイノベーションは生まれない。自社がカルト化していないか、その兆候を見極めて適切に対処する方法を示す。


 企業にはそれぞれ独自の「文化」がある。その組織ではどのような行動が適切で、どのような行動が適切でないかを定義する価値観や規範が存在するのだ。文化は働き方を左右し、健全な文化を持つ企業は意欲の高い従業員を引きつけ、維持し、共通の目標や目的や大義のもとに結束させ、持続可能なパフォーマンスを追求することができる。

 だが、最初は皆が自由意志によって企業の色に染まっていたのが、やがて何やら不気味なものに見えてくることがある。リーダーが意図したかどうかにかかわらず、健全な企業文化があっさり企業カルトと化してしまうことがあるのだ。

 称賛を浴びる企業の多くは、そのぎりぎりの線を綱渡りしている。たとえば、アップル、テスラ、ザッポス、サウスウエスト航空、ノードストローム、ハーレーダビッドソン。どの企業も顧客の中にカルト的ファンをつくり出し、従業員にもじわじわとカルト的行動を促している

 企業カルトの特徴は、従業員の「思考と行動」に対する経営陣の管理の強さにある。まず、採用のときに「適応性」があるかどうかでふるい分ける。入社後は、新人研修やインセンティブの制度を通して、右へならう必要性が刷り込まれる。それがコミュニケーション、意思決定、互いへの評価、雇用、昇進、離職の決断を導いていく。そうした企業風土では、個人主義は抑え込まれ、集団思考が優勢になる。

 一部のカルト的な企業では、職場が家庭や地域社会に取って代わり、こうした支援ネットワークから従業員を(時に意図せず、時に故意に)切り離してしまう。仕事中心の人生が奨励され、レジャーや娯楽や休暇の時間はほとんど残らない。