日本企業で働くビジネスパーソンを、新興国で社会課題の解決に取り組むNPO等に派遣し、本業で培ったスキルを活用して現地の発展に貢献してもらうと同時に、その過程で留職者自身のリーダーシップを高める「留職プログラム」。NPO法人クロスフィールズが今日まで8年にわたって展開している。その記録データの分析で明らかになった「新しいリーダーシップ開発論」についての全8回連載の最終回をお送りする。

 最終回として、未来に向けたネクストステージとして、私たちが最近取り組んでいるプログラムの紹介と、そこから見えてきた新しい仮説の提言を行って、この連載を締めくくりたい。

 学生起業家への留職プログラム展開

 2018年12月から2019年2月にかけて、経済産業省「未来の教室」事業の委託事業として、学生起業家3名を留職プログラムに派遣した。

 学生ながら、リーダーシップを日々実践している経営者が留職プログラムに参加する初の試みである。

 結果は、3名全員が、留職という「異質」な環境でゼロからもう一度リーダーシップを奮い立たせる経験を通じ、リーダーシップの非連続な成長を達成することができた。

 プログラム前後のリーダーシップ・アセスメントにおける学生起業家平均と企業派遣者平均の比較は以下の通りとなった。

 クロスフィールズが作成し、本調査・分析で活用したリーダーシップ・アセスメントの項目は、下表の通りである。本連載第3回でも掲載したが、参考までに再度掲載する。

 上記の結果から、以下のような示唆が得られた。

(1)学生起業家のほうが、元々の「挑戦する力」「現地の社会課題を理解する力」「社会の未来を切り拓く力」が強く、特にプログラムを通じて「現地の社会課題を理解する力」「社会の未来を切り拓く力」は大きく伸びる傾向にある。

(2)企業派遣者のほうが、元々の「巻き込む力」「やりきる力」が強く、プログラムを通じ、これらの力も学生起業家よりも伸びる傾向にある。

(3)学生起業家と企業派遣者の元々の「ゴールを描く力」は同程度であるが、プログラムを通じて学生起業家のほうが伸びる傾向にある。

(4)学生起業家と企業派遣者の元々の「対話する力」は同程度であるが、プログラムを通じて企業派遣者のほうが伸びる傾向にある。