かねて景気失速懸念が唱えられていた中国に代わり、「第二の中国」と目されて注目が集まっていたインド。そんなインド経済に、暗雲が立ち込めている。今年1~3月期の実質GDP伸び率がリーマンショック直後を下回り、約7年ぶりの低水準となるなど、失速が鮮明化しているのだ。インド経済は本当にダメになってしまったのか。今後、現地展開を目指す日本企業が肝に銘じるべきポイントは何か。関係者や専門家の声を拾うと、日本人が知らない「不安の本質」が見えてきた。(取材・文/岡 徳之、協力/プレスラボ)

インドがひどいことになっている!
バッドニュースにおののく企業関係者

「中国市場の開拓が一息ついたところで、これからインドでの販路拡大を考えていたのですが……。最近の報道で出鼻をくじかれた格好です。中国の景気不安に加えてインド経済の失速が報じられたのは、本当にタイミングが悪い。競合他社も同じ気持ちではないでしょうか」

 こう打ち明けるのは、中国をはじめとするアジア各国で加工食品の営業を手がける40代の商社マンだ。

 不動産バブルの崩壊懸念や、欧州危機の余波を被った輸出企業の変調などにより、足もとの中国経済には暗雲が漂っている。そのため、中国に依存したビジネスモデルを考え直す必要性を感じている企業関係者は、少なくない。

 そんななか、アジア市場における「第二の中国」と目されていたのが、BRICsの一角を占める成長市場のインドだった。そのインドの調子が「ここにきてひどく悪い」という報道が相次いでおり、不安が募っているのだ。

「中国に赴いてリサーチすると、現地の消費者の購買意欲は相変わらず強いし、すぐどうにかなるという危機感は感じませんね。しかし、インド経済の失速が報じられて以来、『中国もインドも両方ダメなら、いったいどうなるんだ?』と心配する声は増えました。社内で戦略会議が開かれたり、上層部から分析レポートの提出を求められたりと、余計な仕事が増えてしまい、帳尻合わせが大変ですよ。と言っても、インドの現地事情なんて、実は誰もよく知らないんですけどね……(苦笑)」(商社マン)