ビジネスが失敗する原因はさまざまだ。予期できないトラブルにより致命的なダメージを受けることもある。だが、それは本当に予想外の事態だったのだろうか。物事を都合よく解釈し、自分の信念を裏付ける情報だけで判断を下してはいなかっただろうか。マッキンゼーでパートナーを務めた筆者が、クリティカル・シンキング(批判的思考)を磨くための3つのシンプルな習慣を提示する


 数年前、あるCEOが、自分の会社はマーケットリーダーだと自信たっぷりに断言した。「クライアントがライバルに鞍替えすることはないでしょう。そんなことをすれば大損しますからね」と彼は私に言った。

 ところが数週間のうちに、彼の会社は最大手の消費財メーカー、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)から契約を打ち切られてしまった。CEOは衝撃を受けた。だが本来であれば、彼は衝撃を受けてはならなかった。

 私はこれまで20年以上、苦戦する企業を支援してきた。経営の不手際のせいで助けを求めにきた企業もあれば、テクノロジーの変化に乗り遅れてしまった企業もあった。少数だが、経営陣の怠慢にすぎないケースもあった。

 しかし私の経験から言うと、組織の問題には共通の根本原因がある。それは、クリティカル・シンキング(批判的思考)の欠如だ。

 喫緊の問題を論理的に考え抜き、あらゆる角度から評価する時間を取ろうとしないビジネスリーダーが、あまりに多い。根拠が何であれ、しばしば最初の結論に飛びついてしまう。さらにまずいのは、経営幹部が、自分のそれまでの信念を裏づけるような根拠を選んでしまうことだ。メタ認知、すなわち思考について思考する態度の欠如も、自己過信の大きな要因である。

 だが幸い、クリティカル・シンキングは学習できるスキルだ。私は最近、クリティカル・シンキングを磨きたい人を支援するために、非営利団体リブート・ファンデーション(Reboot  Foundation)を立ち上げた。自分の個人的経験と同僚の研究結果から、クリティカル・シンキングのスキルを磨くためにできる基本的な3つのことを、次のようにまとめた。

1. 前提を疑う
2. 論理的に推論する
3. 思考の多様性を追求する

「そんなことは、とっくにやっている」と思うかもしれない。おそらく、その通りだろう。しかし、できる範囲で最大限に意識的かつ徹底的にはやってはいないのではないか。

 この3つの重要な精神的習慣を養えば、求人市場でますます期待されるスキルを向上させるのに、大いに役立つだろう。