中国 2019年6月10日

旅行作家・下川裕治氏が
バングラデシュの小学校支援を28年間続けている理由(後半)【番外編】旅行作家・下川裕治氏特別インタビュー

理想と現実の狭間で揺れる支援の現場

 ウシュコラ小学校では、他にも寄付だけに頼らずに運営できる仕組みを模索してきた。同校は寺の中にあるが、その寺には、観光客が訪れることが少なくない。そこで校長は、入場料を徴収するアイデアを思いついた。早速日本でチケットを印刷し、徴収を開始した。

 ところが3日経つと、当局から「許可を取っているのか」と横槍が入った。役所に出向くと、「前例がないから」と難色を示すのだ。

 「でも、やっちゃダメとも言わないんです。政治家にも頼み込みに行きました。彼は学校経営者で、そこで働いているラカイン族の先生もいたので、ラカイン族への理解があると思ったのですが、結論は出ませんでした。

 それでも、ダメと言われたわけではないので、続ければいいと思うのですが、彼らはやりたがりません。少数民族には、目立つことをしたくないという特徴があるんです」

 どこかの島国の事なかれ主義と同じであるが、その意識は、支援者のなかにもある。

 「日本でお金を出す人が、いちばん純粋に『いいことをしている』気分になれるんです。お金を預かった人間はきついです。成功させないといけないという責任があるのに、何をやろうとしても、現地の事情でダメになる。かといって、許可をもらうために役人に賄賂を贈ろうかという話になると、それはどうなんだとなります。

 日本の人たちは綺麗な身でありたいし、生臭い話は聞きたくないんです。プロの援助組織は、そういう話を絶対に外に出さず、うまくいった話だけを伝えます。お金が無駄に使われていないということをきちんと伝えないと、次の援助をもらえないからです。しかし、現実は必ずしも理想通りに進みません。現場にいる人たちは、どこもその矛盾に悩んでいると思います。

 たとえば国境なき医師団に参加している医師が兵士を治療すると、元気になってまた戦地へと戻ってしまう。そこでその医師は、戦争を助長しているのではないかと悩むわけです。現場には、綺麗事だけでは片付けられないことが多々あります」

 下川さんは「プロの支援活動家」ではないからこそ、支援の難しさを率直に語る。それでも28年間続けてきた。それは人の良さもあるだろうが、過酷だからこそ敢えて挑戦するという、下川さんの旅のスタイルに通ずるものがある気がする。

入場料徴収開始のセレモニー。左から二番目が下川さん【下川さん提供】
3日で断念せざるを得なかった入場料の徴収【下川さん提供】

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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