中国 2019年6月10日

旅行作家・下川裕治氏が
バングラデシュの小学校支援を28年間続けている理由(後半)【番外編】旅行作家・下川裕治氏特別インタビュー

校舎修繕のためにクラウドファンディングを開始

 教師の給与は23年間変わらず、授業料も、140名在籍する生徒のうち払える家庭だけは月50タカ(約67円)を支払っているが、基本は無償。外部環境が変わるなか、まるで学校の中だけ時間が止まっているかのようだ。しかし、ひとつだけ大きく変わったものがある。それは校舎の老朽化だ。

 築30年を超える木造校舎はあちこちで悲鳴を上げ、雨漏りはあるし、支柱の腐敗で2階の廊下がいつ抜け落ちてもおかしくない状況だ。生徒の安全を脅かしかねず、学校の存続をも揺るがしかねない。しかし、修繕には多額の費用が必要となる。

 頭を悩ませていた下川さんが知り合いに進められたのは、クラウドファンディングだ。オリジナルメンバーだけで支援を続けることには限界がきている。クラウドファンディングを通じ、広く支援を呼びかけることにしたのだ。そのことを知らせる目的もあり、今年2月、下川さんは半年ぶりに学校を訪れた。

 「半年も空いてしまったのは仕事が忙しかったせいなのですが、お金がないと何を言われるかわからないので、行くのが辛くなっていたのは確かです。でも、クラウドファンディングの話をしたら、ひとりの先生が言ったんです。『お金のことは気にせず、いつでも日本人を連れてきてください。私たちのつながりはお金だけではありませんから』」

 下川さんは、こみあげるものがあったという。だからこそ、校舎の修繕を成し遂げたいという思いは強い。そして、その思いを強くしているのは、自身が引き際を考えはじめていることも影響しているかもしれない。

 「僕はもうすぐで65歳なので、この事業に関わるのはあと5年だと思っています。その間に先生たちには、自立した学校運営に持っていく方法を考えてほしいと思っています。引き継いでくれる若い人もいませんので……。

 ひとつの案として、英語教室を開くことを考えています。ネイティブの発音を聞くことができる設備を備えた教室を作って、そこで授業料をしっかり取るんです」

 5年後というと、森智章氏(ラカイン族の学校設立のきっかけとなった日本人ジャーナリスト:詳しくは前編参照)の33回忌を終えた節目でもある。それまでにウシュコラ小学校が自立できれば、お金だけではない、新しい支援の形を示すことになる。その動向をこれからも注視したい。

●学校修繕のためのクラウドファンディング
 

ウシュコラ小学校【下川さん提供】

(文/大橋史彦)

著者紹介:大橋史彦(おおはし・ふみひこ)
法政大学卒業後、編集プロダクションに勤務。2006年に中国に渡り、08年より上海在住。情報誌の編集長を経て13年9月よりフリーランス。現在は、日本と上海を行き来する。

 

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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