近年、米国の失業率は低下し、労働市場は堅調に推移しているといえる。一方、新卒者の状況に対しては、やや厳しい見方もある。新卒者の失業率は低くなく、収入格差も広がっている。だが、今後も大学の学位を持っていることは有利に働くため、新卒者の未来は明るいと筆者は分析する。


 大学新卒者の一団が労働力に参入している。そして、これまでと同じように、大卒者は比較的うまくやっていけるだろう。大学の学位を持つ人のほうが、持たない人よりも失業率は一貫して低く、収入は一貫して高い

 新卒者にとって、米労働市場の状態は、初就職の場であるという以上に重要なキャリア上の意味を持つ。卒業して堅調な労働市場に参入する人は、不況時に卒業する人よりも、キャリアを通じての収入が多くなる。その後に不況に見舞われたときには、大学の学位を持つ人のほうが保護される。景気の低迷時には、大学の学位を持たない人は、より大きな失業リスクにさらされる。

 では、いまの新卒者の労働市場は、昔と比較してどうなのだろうか。

 2019年4月の時点で、米国の失業率はわずか3.6%であった。ほぼ50年ぶりの低い数値だ(ただし、「25~54歳の雇用・人口比率」に含まれない非就業者を換算した幅広い尺度では、不況前の水準に戻った程度にすぎないが)。

 だが、新卒者の労働市場は、労働市場全体とはまったく様相が異なる。その理由の一つとして、新卒者(22~27歳で学士号を有し、もう在校していない)は、特定の仕事と業界に集まる傾向にあるのだ。

 新卒者は、労働者全体との比較で、広告・宣伝マネジャー、保険数理士、ニュース記者、法律事務員になる傾向が5倍以上も高い。また、金融アナリストやクレジット・アナリスト、地質学エンジニアや農業科学者になる傾向も並外れて高い。その一方で、バスの運転手や施設の清掃・管理者になる人、建設や製造の仕事に就く人は、新卒ではごくわずかである。

 今日の新卒者の労働市場は堅調に見えるが、歴史的記録を破ってはいない。

 ニューヨーク連邦準備銀行が発表した最新の分析によれば、2018年12月における新卒者の失業率は3.7%。これは労働力全体の失業率3.8%をほんの少し下回るだけであり、1990年からのデータ記録開始以来、最も小さい差異である。

 新卒者の失業率は通常ならば、全体の失業率より少なくとも1%ポイントは低かった。今日の新卒者の失業率は、2006年後半~2008年初頭と、1997年~2001年の雇用拡大時よりも高い。

 危険な徴候は、ほかにもいくつかある。今日の新卒者は、1998年~2003年に比べ、能力以下の仕事、つまり大学の学位を必要としない仕事に就く傾向が高い。さらに2018年時点で、新卒者の収入の中央値は、2000年と1990年よりも高くはなく(インフレ調整後)、その間に収入格差はむしろ拡大した。

 これらが意味するのは、新卒者の収入下位4分の1に当たる人々は、現在のほうがかつてよりも稼ぎが少ないということだ。