働きながら子育てする親にとって最も恐ろしいのが、その日の夕飯について考えることだ。ハードな仕事を終えて帰宅してすぐ、バランスの取れた完璧な食事を用意して、家族揃って食卓を囲むことは困難である。ファストフードやインスタント食品に頼るのも仕方ないが、自分が描く理想と現実のギャップに苦しむ親は多い。筆者は、そうした悩みを解消するための、シンプルかつ具体的な13の戦略を示す。


 仕事を持つ母親と父親が、最も恐れる質問がある。それは毎日、だいたい午後3時頃に決まってやってくる。「で、……今晩の夕飯、どうする?」

 パートナーからのメッセージにせよ、自然と頭に浮かんだにせよ、この問いを前にすると反射的に、あなたは身構えてしまう。何しろ、働く親にとって夕食時は最も危険な時間帯の一つ、ストレスをイヤというほど感じる時間帯なのである。

 なぜか。夕食の準備という極めて明快かつ現実的な課題は、心理的、感情的、および物理的な問題としてのしかかり、しかもそれが、働く親のエネルギーレベルが最も低下してきているときに襲いかかるからだ。

 職場での長い一日を終えて疲労困憊し、それでもやらなくてはならないことが山積しているなか、レストランやインスタント食品に目が向くのも仕方ないだろう。残念ながら、あまり健康的でない選択肢ではある。

 職場からどんなに大急ぎで帰宅しても、子どもの就寝時間は刻々と迫っている。もはや、家族全員が同時刻に、同じテーブルで夕食にありつくことなど不可能に思えてくる。9時間ぶりに会った我が家の幼児に、ブロッコリーを食べる必要性を説いて聞かせる気にもならないだろう。

 家族で同じテーブルを囲み、健康的で、幸福で、栄養価に富む食事をいつも取り、1日を終えられたらどんなにいいだろうと夢見るものの、実際には精神的葛藤を抱え、ストレスを感じ、罪悪感にさいなまれている。

 大丈夫、あなたは一人ではない。ほとんど、とは言わないが、働く親の多くが同様のジレンマを抱えて足掻いている。

 幸い、打開策はある。以下に紹介する最も効果的な13の戦略をはじめ、幅広いアプローチで、シンプルかつ具体的な策を講じれば、食事準備のロジスティックを整備し、ストレスを緩和し、家族そろって夕食の食卓を囲むことができるだろう。

全体像をとらえ、コントロールする

 ●家族との夕食を優先事項にしよう

 予算報告書の作成を終える、車を修理に出す、重要な顧客とのミーティングの準備をする、娘が学校で出演する劇の衣装を縫う……最優先事項のリストはまだまだ続く。予定表はギッシリ埋まっていて、「やることリスト」は気が遠くなるほど長く、その多くに「大至急」マークが付いている。

 本気で家族との夕食を実現させたいなら、こうした事柄と同じように、家族との食事も優先事項に昇格させよう。そのためには、あなた自身の心構えを変える必要がある。また、家族との食事を大切な日々のルーティンとして、認識する必要もある(裏付けが欲しいなら、親と食事をともにする子どもはのちに、薬物乱用に走る確率が大幅に低いことを立証した科学的研究を参照するとよい)。

 それには、シンプルかつ現実的なステップが役に立つだろう。たとえば、Outlook(アウトルック)やグーグルのカレンダーで、家族との食事に充てたい夕方の時間帯と、食材の買い出しや食事を準備するための時間枠をキープしておくとよい。どちらも「公式」な優先事項となるので、実現の可能性はぐっと高くなる。

 ●現実的に考え、プレッシャーを取り除こう

「家族とのディナー」というと、心のこもった出来立ての手料理を毎晩、磁器に盛りつけて出す食事を想像しているのではないだろうか。そんな自分への期待を見直し、食事へのプレッシャーを少しでも取り除こう。

 たとえば、家族そろっての食事は、金曜の夜、週1回と定めてもよい。もし学校や仕事のスケジュール上、現実に即しているなら、ディナーではなく、朝食を家族の集まる食事の場にするのもよい。

 そして、電子レンジや残り物、紙の皿を使うことに罪悪感を抱く必要はない。重要なのは、完璧さではない。定期的に家族で食卓を囲むことなのだ。

 ●新たなルールを定めよう

 5歳の子どもは、野菜を拒否するかもしれない。7歳の子どもは、ソース抜きのパスタを欲しがるかもしれない。あるいは2人とも、あなたが用意した食事ではなく、冷たいシリアルを要求するかもしれない。

 だが、働く親として二足のわらじをはいているだけで、あなたは十分に大変なのだ。そのうえ、注文するとすぐに出てくる料理担当コックや 忍耐強い交渉人の仕事まで引き受けている場合ではない。

 だから、いますぐそれらの職は辞任し、確固たる新ルールを設けよう。たとえば、「食事は全員同じ。代替および変更不可。出される食事を食べないなら、次の食事まで待つこと。文句がある人は皿洗い」

 新しい体制を定め、それを貫くのは簡単ではないものの、あなたが意思を曲げなければ食事はより簡単で、心地よいものになるだろう。