仕事を通じて社会を変えていこうと活躍する若きイノベーターたちは、どう育ってきて、どんな原体験に支えられているのか。今回は、人類の生活圏を宇宙に広げるべく、月面資源開発に取り組むispaceの創業者、袴田武史さん。意外にも、第1希望の道に進めない経験の方が多かったようです。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」論説委員 深澤 献)

夢は「東工大へ行って
ロボコンで優勝したい」

イノベーターの育ち方 袴田武史氏
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──今の仕事につながる最初のきっかけは何でしたか。

 記憶にあるのは「スター・ウォーズ」です。10歳、小学校3、4年生のころだと思います。テレビで放送していたのをビデオにもとって繰り返し見て、見終わると、レゴで宇宙船を作っていました。物語も面白かったのだとは思いますが、とにかく宇宙船、それからロボットに魅了されました。

 同じころに、NHKで大学ロボコンを見ています。日本代表として東京工業大学などが出場し、世界の大学生と戦うものです。大学へ行くなら東工大で、ロボコンに出て優勝したいと思いました。

 ロボットで何をしたいということは考えていなくて「作りたい」「ロボコンに出たい」。それ以前から、あまり将来何になりたいかは考えていませんでした。ただ、父親が銀行員で、銀行員にだけはなりたくなかったです。

──宇宙船に出合う前はどんな子供でしたか。

 ガキ大将のような活発な子ではなくて、どちらかというとおとなしい方だったと思います。

 勉強では、小学校時代はこれといった得意科目がなくて、中学では勉強しなくても点数が良かったのは社会と理科で、あとの教科はひどい成績の時期もありました。